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テンポラリー通信

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2013年 03月 17日

切り傷は直線をなすー風の夢・弥生(12)

正面中央右に展示された作品が、網走在住の佐々木恒雄さん
の作品である。
選んだ一首は

  切り傷は直線をなすアフリカの幾つもの国境(くにざかい)にも似て

作品は小さめながらインパクトに満ちている。
画面中央には少し俯きかげんの首飾りをしたアフリカの女性とも見え
る黒い顔が大きく沈んでいる。
髪は直線で切り込まれたように走り、全体に暗い色調が仮面のよう
である。
その頭部背後の画面上部3分の1は緑を含んだ青だが、残り3分の2
は茶褐色の背景だ。
その中に切り傷のような斜線が幾本も走っている。
佐々木さんが歌に触発されたものは、自然豊かなアフリカの大地に
無機質に刻まれた国境の直線、その直線を切り傷とした国境の言葉
であろう。
北方領土に近い北の海で働く佐々木恒雄の実感が、きっとこの絵に
反映されている。
人物背後の上部画面3分の1を占める青は彼の働くオホーツクの海
を思わせ、画面3分の2を占める黒く沈む茶褐色の色はアフリカの土
を思わせる。
そしてなによりも中央に俯く暗い仮面のようなアフリカの女性と思しき
人物の保つ忍従とも怨念とも見える凝固した表情に佐々木さんの今
が投影されているのを感じるのだ。
尾道で造船業に従事する野上裕之さんの仮面、オホーツクの海で
漁業に従事する佐々木恒雄さんの仮面のようなアフリカ女性。
そしてこのふたつの仮面には眼がともにない。
しかしながらそこに共通するものは、生活の現場と生の葛藤から
生まれる凝視の眼差しである。
この眼のない仮面の背後には、内に秘めて熱く凝視し続けている
炎のように燃える眼差しの存在がある。
その眼差しの発する磁場こそが、個々の新たなる故地創造の磁場
とも思える。

会場正面3点の真中にある藤谷康晴さんの作品は、眼が立ち上がって
くるような絵画である。彼の選んだ一首は、

  北方と呼ばれて永き地をひとり老狼はゆく無冠者として

*山田航歌集「さよなら バグ・チルドレンをめぐる変奏」展ー3月16日(土)
 -31日(日)am11時ーpm7時:月曜定休。
 :野上裕之(彫刻)・佐々木恒雄(絵画)・藤谷康晴(絵画)・中嶋幸治(造形)
 ・アキタヒデキ(写真・文)・森本めぐみ(造形)・高臣大介(ガラス)・藤倉翼
 (写真・ウメダマサノリ(造形)・森美千代(書)・メタ佐藤(写真)・竹本英樹
 (写真)ほか。
*23日(土)午後5時~鼎談田中綾×山田航×及川恒平

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2013-03-17 13:59 | Comments(0)


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