寒中、熱波のように伝わったのだろうか・・。
まだ東京の吉増さん本人から嵐のようにfaxが届く。
フライヤーの追加発送名簿、海外の知人友人の名簿、
午後7時の初日お祝い乾杯のfaxである。
150枚程新たなフライヤーの追加で、こりゃあとても足り
ないわ・・・。
年末の多忙な中、手刷りの活版多色刷りの追加は酒井
さんにご苦労掛ける事となるが仕方がない。
嬉しい悲鳴である。
今回の展示の基底となった吉増剛造の新作詩は、今年
2月石狩河口から始った。
「詩の傍で」と題され朝日新聞電子版、現代詩手帖に発表
され一年間続く詩作として書き始められた。
その草稿が今は250葉となり、当初三千行の予定を大幅に
超え現在は五千行を数え、さらなる深化を続けている。
会場の真中に置かれているのは、その草稿の原本・大束
ファイルである。
一方吉原洋一氏は昨年2月より毎月22日一年間吉増剛造
を撮り続け、今回の吹き抜けに吊られた帳(とばり)のように
繋がった一巻はその最初の2011年2月22日佃自宅の吉増
さんの写像である。
そしてその一巻と交差するように吊られたもう一巻は、最終月
の今年2月22日の写像である。
それ以外の2011年3月から2012年1月までの吉増さんの
写像はそれぞれ一巻の段帖となって2階に置かれている。
鈴木余位氏は一昨年暮初めてこの場を訪れ、ちょうど展示中
の吉増剛造展「石狩河口/坐る ふたたび」に感動し、それま
で封印していた8mm映像を解き撮影した。
その後2月に再びこの地を訪れこの時初めて石狩河口に赴き
同じく8mm映像で真冬の撮影行を敢行したのだ。
彼の職場での師でもある映像作家石田尚志さんの関係から
吉増剛造氏との接点はあったにせよ、石狩行は全く単独の
鈴木余位氏の個人的行為であった。
今回の展示は、こうした個々の営為が吉増さんの大草稿束
を軸にして渦巻きのように磁場を生んでいる。
そしてこの空間は時と共に澄んで静謐な渦の中心そのもの
となる気配が生まれている気がする。
14日以降の吉増本人の来廊、そして新作GOZO CINE上映
さらに書き続けられている新たな草稿260葉分の追加と、嵐は
しばらく続くだろうが、それ以外の多くの時は余位さんの録音し
た石狩河口と海の風と波の音だけが響く、今朝の白い雪の光
が支配するような、静謐な渦の中心が澄んで在るに違いない。
*吉増剛造展「ノート君~’古石狩河口から書きはじめて」
:吉増剛造(詩草稿・映像)・吉原洋一(写真)・鈴木余位(映像)
12月11日(火)-1月13日(日)am11時ーpm7時月曜定休。
正月1,2,3日休廊
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503