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テンポラリー通信

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2012年 12月 01日

星の距離ー星雲・12月(5)

夕張出身の映画人N氏から不意に電話が来る。
久し振りの電話だが、声が昂ぶっている。
長年のテーマだった夕張を含めた一連のこの地域を
舞台とする映画製作の目途が立ったという。
明治初期のこの地域を舞台とするある小説の脚本に原作者
の承諾を得て来年から制作にかかるという。
その際札幌側のロケハン地域の協力を頼むという内容だった。
東京に出て演劇・映画の前衛的な仕事に携わり、いつか故郷
の夕張でその仕事の舞台を創りたいと願っていたN氏のライフ
ワークともなる仕事と思う。
明治初期の五稜郭戦争から発した共和国軍の夢の系譜は、
石狩河口から内陸の夕張へとその戦いの場を移してゆく。
札幌も含めたこの地域一帯の丘陵地形を実によく取り込み
書かれた小説で、夕張出身のN氏はこの小説に以前から惚れ
込み脚本化し、自ら監督して映像に乗り出すというのだ。
その撮影のロケハンに私も札幌側から協力して一緒に歩こう、
という誘いだった。
折りしも、今月始る吉増剛造展は「’古石狩河口から書きはじめ
て」がサブタイトルの展示である。
<’古石狩河口>とは、近代以前の縄文の大地を象徴していて、
N氏の映像として試みられる近代明治初期の風景とは、正にこ
の近代とそれ以前の自然との境が映像の背景として描かれる
事となるのだ。
不思議な時の合致である。
近代をそれぞれの立場で問う仕事が濃くなってきている。
奥多摩の福生から自由民権運動のシルクロードに道を経て
吉増剛造の近代の道があり、石炭産業の石炭ロードを経て
夕張のN氏の近代の道がある。
私は私の札幌から近代そのものを問う歩行がある。
これらが星の距離が熱く重なるように速度を増して近づいて
来る。
N氏の熱く昂揚した声を聞きながら、星々の距離の近づくような
熱い磁場を感じていたのだ。

*吉増剛造展「ノート君~’古石狩河口から書きはじめて」-
 12月11日(火)ー1月13日(日)am11時ーpm7時月曜定休。
 :吉増剛造(詩草稿・映像)・吉原洋一(写真)・鈴木余位(映像)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-12-01 12:25 | Comments(0)


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