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テンポラリー通信

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2012年 11月 02日

秋深まるー緋月・11月(2)

曇った灰色の空気に紅葉の赤が滲んでいる。
薄い雨模様の日。
心も滲んで、想いは廻る。

10年以上前札幌ドームが完成し、その周りに野外美術の
展示が同時に設置された。
3億以上も公金を使った美術の木立ち「アートグローブ」である。
折りしもサッカーのワールドカップ開催へ向けてこの札幌ドーム
も大きな招請施設となるものだった。
月寒丘陵の森を削り、UFOのようなドームが聳え立ち国道から
見たその風景は一種異様な光景だった。
野球やサッカーの殿堂として、それは流れとして仕方のない時代
の側面もあった。
しかし私が批判したのは、この芸術の木立ちと称するアート設備
である。企画した某有名キューレーターは、東北で棚田や里山の
美しさを主題にアートイヴェントを企画している人物である。
月寒という地名がチキサプというアイヌ語から生まれ、その意味
には火を鑚る処ー春楡ーチキサニの丘という意味が潜んでいる。
つまりはこの丘陵地帯は先人たちの里山(キム)のひとつだった
という事でもある。
隣接する広大な農業試験場の森にかってのその面影を今も
見る事ができる。
先住民にとっての里山とはキムと呼ばれ、これは<生活圏の一部
としての山>で、<聳え立つヌプリ>とは区別されてある。
その丘陵地帯を削りドームと呼ばれるスポーツの殿堂を聳え立た
せ、その代償のように<アートグローブ:美術の木立ち>という
野外美術作品群を展示したのである。
何故このような巨額な公金をもって、新たな<森もどき>を造ら
ねばならないのか。
その事を<傷ついた自然の側から>の視点で批判したのが、
2001年「elan」という美術批評の雑誌に私が書いた文である。
この論は当時大きな反響を呼び、議会でもその資金用途の是非を
追及される事ともなった。
さらに同じ雑誌で3号にわたり特集を組み話題を提供し続けた。

今となってはもう誰もあのドームの周囲に芸術作品の展示が野外
陳列されている事実に関心も持たない。
先日の北海道日本ハム対読売巨人軍の対戦のように熱く盛り上
がって多くの人が札幌ドームに注目するが、一方これからの半年
雪の季節にこれらの作品群は雪に埋もれて見向きもされず、存在
する事さえ気付かれないだろう。

野球やサッカーの為に優れた室内設備を保つ北国ならではの
施設の在る事自体を否定する気持はさらさらない。
ただそこに何ゆえパブリックアートと称する美術群が必要なのか、
そこに真の<公共>という意味を、文化の視点から問うのである。

個々の優れた作家の力量を否定する気持は無い。
ただその作品の置かれる本当の場という要素・ヒッグス素粒子の
ような磁場をもっと思慮すべきであるという事が、言いたいのだ。
先人の里山ともいうべき丘陵を破壊して、アートグローブ(美術の
木立ち)はないだろう。

*収蔵品展「岡部昌生初期作品を中心に」-11月11日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-11-02 14:24 | Comments(0)


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