気温が下がり、スト‐ブが恋しくなる。
そんな寒々とした日、花籠を持ってM君が来る。
ここに花を置いても良いか、と聞く。
え、何で・・?と問い返す。
H嬢の個展を勘違いして某画廊に持って行った。
会期が変更になって、芸術の森美術館の企画展で出品
していると聞き、それからそこへ出掛けたと言う。
しかしそこも作家は不在で、やむなくここまで持って来たと言う。
花籠の事情を聞いて、じゃあH嬢に連絡して今度渡すよ、と
話した。
綺麗な花籠を両手に持って、旭ケ丘から芸術の森の山奥まで
徘徊したM君の純情が微笑ましかった。
一度ここでお会いしたH嬢にすっかり魅せられたのかも知れな
い。後でH嬢に電話で連絡したら、本人はM君の事をあまり憶
えていない様子だった。
KY壁男と私が勝手に仇名を付けたM君の面目躍如たる話だ。
空気だけでなく、個展の会期変更も読めなかったのね。
殺風景な無人の白い会場に、今も彼の残した花籠が不釣合い
に佇んでいる。
M君とはその後芸森美術館の閉ざされた空気感を話した。
山奥の澄んだ光の中に、街中と変わらぬ室内空間を造ってい
る矛盾を話したのだ。
遠く地下鉄とバスを乗り継ぎ700円の入場料を払ってまで花を
持って訪ねても、そこに肝心の作家は居らず監視員に聞いても
親身になって貰えず、行き先を失ってここまで花を持って来た
M君のなんとも切ない気持が、展覧会批判とも重なって火を
噴いた。
私自身もその2日前に展覧会を見てある違和感を感じていたの
で、話は共鳴しさらに炎は燃えた。
M君のお陰で、少し落ち込んでいた気持が回復する。
壁男クンの垂直突進性がこの場合良い方向に働いて、くすんだ
空気を取り払ってくれた気がする。
過激だが純粋で良い男である。
山田航さんの出版記念会にも出席する、と言って本を購入して
くれ感謝である。
*収蔵品展ー岡部昌生の旧作を中心にー10月22日(火)-
11月4日(日)am11時―Pm7時:月曜定休。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目斜め通り西向
tel/fax011-737-5503