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テンポラリー通信

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2012年 10月 13日

桟敷のふたりー蒼月・10月(11)

今年3月相次いで亡くなった八木保次・伸子追悼展の際快く
所有する作品を提供してくれたK氏とH氏の誘いで、閉廊後
昔よく行った円山のおでん屋さんで、ふたりと待ち合わせる。
自転車で少し遅れて到着すると、二人はもう先に席に着いて
いる。なんか一番若いなあ、と冷やかされる。
あらためてふたり揃って見れば、もういい親爺である。
自分で自分の姿は見えないが、あらためて年齢を感じる。
話は、燃えた’80年代’90年代の話に始まり、連合赤軍や
寺山修司の天井桟敷の話で始った。
H氏は演劇の人であり、K氏は学生運動の人である。
ふたりは同じ大学出身で、私とは私の円山北町時代に知り合
った友人たちでもある。
K氏は特に美術への造詣が深く、八木保次さんの絵画と人間
性を高く評価している。
そして彼はなんとか八木さん夫婦の作品をどこかで常時展示
できないか、とK氏が切り出した。
巡廻展でも良いから忘れられないようにどこかで常時の展示を
続けたいという提案だった。
常設展示場を造るには、資金・場所の問題がある。
その前にとりあえずとにかく人目に出す機会をつくる事だという。
来年の一周忌までにK氏が主唱して声を出し、多くの人に呼び
かけようと話は進んだ。
さすがに学生運動家出身だけあって、こうしたシュプレヒコール
の声出しは身に付いていると感心した。
ふたりの熱い時間を生きた記憶と八木保次・伸子さんの作品は
深く結びついている。
彼らは彼らの濃い人生の為に八木さんたちの絵画を想うのである。
作品と個々の人生の記憶が深い交感を保っている。
学生時代の熱い突進を経て、社会人となってから熱い想いでそれ
ぞれが独立しある夢の実現の為にした仕事、その時に八木さんた
ちの作品と出会っているのだ。
結果は夢と消えもう今は何も無くなってしまったのだけれども、八木
保次・伸子さんの死後、その想いは焼け野の残り火のように今も熱
いのである。
この八木さんへの想いは、同時に自分たちの生きてきた時間への
熱いラブコールでもあるのを私は感じていた。
遺された彼らの作品たちがそれを促がすのだ。
これは単なる回想や追慕ではない。
もっとラデイカルな自分たちの今へのエールなのだ。
少し草臥れ歳を経た男たちの胸の内に、この時燃える命の瞳をみた
気がした。
ああ、これも青春だなあと気持ち良く酔いの周るままふたりの顔を
見ていた。
秋深まるおでん屋の一角は、まるでふたりの天井桟敷のようにこの
時、暖かく熱い芝居小屋のように賑わっていたのだ。

*野上裕之展「彫刻の軌跡」-10月14日(日)まで。
 am11時ーpm7時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-10-13 12:51 | Comments(0)


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