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テンポラリー通信

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2012年 08月 29日

パウル・クレーの花ー熱月・8月(23)

昨年スイス在住の磯田さんが送ってくれたパウル・クレーの花が
咲いた。
お花屋さんのMさんに種子を渡したのだが、昨日瓶に入れて花を
届けてくれた。
小さなアザミのような可憐で凛とした花である。
スイスのベルンにお住まいの磯田さんの手紙では、画家のクレーが
こよなく愛した花という。
昨年小さな種子で送られて来た物が、こうして今小さなピンクの花
を咲かせているのを見るのは不思議な感動である。
本当は何とかという植物名があるのかも知れないが、スイスの人は
この花をクレーの花と読んで、画家を偲んでいるのだろう。
一緒に送られてきた瓶詰のペーストも行者ニンニクで、熊の木彫り
の発祥地といい、不思議と北海道に近いスイスのようである。
このパウル・クレ―の花も似た花が北海道にもあるのではないだ
ろうか。
砂澤ビッキが音威子府の森でこよなく愛した巨樹があったが、その樹
を土地の人はビッキの樹と呼んでいた。
これと同じ事がパウル・クレーの花という言い方にもなっているのだろう。

お花が届く前10年ぶりかしら、長年アーテイストレジデンス事業に携わる
Oさんが訪ねて来る。
少し以前よりふっくらとして、元気そうだった
今札幌市が熱心に進めている国際美術展トリエンナーレ事業の話を聞く。
私は大体以前からこの事業には批判的だったから、遠慮なく意見を言わ
せてもらう。
事業の中心にいて、同様の悩み・疑問を抱いていたらしいOさんも熱心
に話を聞いていた。
事業そのものよりも、本州生まれ育ちのOさんが何故この北の大地に惹か
れ今住んでいるのか、という本質的な問題へと話は入った。
他所にないこの地の魅力を、インフラ的施設・自然環境の相違に矮小化
する事無く、純粋近代の視点からコンテンポラリーな視座を構築すべきだ
と話した。
そしてその場として、「緑の運河エルムゾーン」の話をした。
大規模地下通路や公的美術施設物、あるいは都市目線の郊外の森という
場では、世界になんの魅力も発信出来ないのではないか。
インフラ施設の好条件だけでは、産業経済界のテナント誘致事業と大差
ない話である。
より本質的な場を提示しなければ、真にインターローカルな国際展は
出来ない筈だと話した。
それにはOさん自身が何故ここで生きていこうと思っているのか、を
もっともっと見詰め掘下げて普遍化して欲しいと思ったのだ。

一輪の小さな花にもっともっと学ぶべきである。
遠い欧州のアルプスに咲くこの一輪の花は、国際的云々とか考えて
生きている訳では決して無い。
ただただ与えられた与件の内に花開くのである。
それで良いではないか。
その懸命な花の命が人の心を撃ち、他者の心にも花を咲かせるのだ。
クレーの花やビッキの樹のような、札幌固有のものを何かと問われて
応えが無いようでは何も生まれる筈もない。
流通の物流回路と文化の創造回路は本質的に違うのである。

*「記憶と現在」展ー8月31日(金)まで、am11時ーpm7時。
*秋田奈々写真展「呼吸する温度」-9月12日(水)-17日(月)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-08-29 12:43 | Comments(0)


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