風が吹いてバラバラと微かな音を立てて、繁る蔦から種子が落ちている。
黄緑の細かな粒子のようで、地面が絨毯のようだ。
時が経つと、この緑は茶褐色の粉のようになって地面に同化する。
蔦の繁殖なんだろうなあ。
ここに引っ越して来た頃は、細く痩せた蔦だったがここ何年かで
人の出入りの所為だろうか、その湿度が蔦を元気にするのだろうか、
建物全体を覆うほどに繁茂してきた。
前のスペースにも窓枠一杯の蔦が繁って美しく楽しませてくれたが、
ここでもそうした蔦の姿が見える。
街中で育った自分には、こんなに身近に蔦を見る事はなかったから、
蔦にも実があり季節とともに変化する様子は非常に新鮮な経験だった。
特に家の内側から見る窓枠に絡まる蔦は、外の光を縁取りして美しい。
一枚の透明な、あるいは半透明なスリガラス越しに見える蔦の縁取りは
絵になる美しさである。
ガラスを開けて見ると、これが意外と生々しく生物を感じる。
小さな虫や蜂がいたり、緑の葉、緑の蔓が生々しく獰猛にすら感じられる。
一枚のガラス越しの方が、蔦は詩的で美しいのだ。
夏の暑い頃突如蔦の下には、バラバラと音を立てて生殖の種子が放出さ
れる。
この時蔦が生き物であり、種の保存の為に精一杯生きている存在である
事をこの音と種子から感じるのだ。
秋には赤く紅葉し、夏春は美しい緑の藻のような蔦。
絵画的な色彩において蔦を見ている事が多かったけれど、こうして身近に
一緒に呼吸していると、同じ生き物としての微かな友情のようなものすら
時に感じているのである。
空家だった時はか細かった蔦が、こうして同じ場所で呼吸する事でその体温
の湿度がきっと生育にも関係してこうも豊かに繁ってくれるからだ。
樹も含めて植物とは人間に寄り添う最大の伴侶なのかもしれない、と思う。
*「この世界に」展ー8月5日(日)まで。am11時ーpm7時。
:今村はまなイラスト・マンガ×森本めぐみ絵画+村岸宏昭絵画
:今村はまな作品集「私も自然の中の一部なんだ」-1500円
:今村しずかCD「この世界に」-1200円
:村岸宏昭遺作集ー2000円
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503