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テンポラリー通信

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2012年 07月 19日

樹霊の旅ー幻月・7月(14)

月曜、火曜と搬出・壁塗りを終え休日とした昨日、以前から約束していた
界川ー円山川ルートと緑の運河エルムゾーンを藤谷さんを案内し歩く。
円山北町バス乗り場で待ち合わせ、旧テンポラリースペース前から歩き
出す。懐かしい木が立っている。
一度は枝を切り払われた白樺の樹が、再び枝を伸ばしていた。
さらに奥の銀杏の樹は変わらず、さらに太く大きくなっている。
この樹を借景にして2階の大窓から見た円山、藻岩山の風景は四季を通し
て美しかった。
随分写真を撮ったなあ。
そこから川俣正のインスタレーシヨンを行なった旧テトラハウス角を曲がり、
かって重兵衛沼と呼ばれ今は公園となっている川の道を抜ける。
直線の道路に対しくねくねと曲がる川跡の小道を曲がって、旧テトラハウス
の裏を抜ける。
そこから細い路地裏を抜けて、遊歩道にもなっている界川の道を歩く。
古い家が裏を見せて建ち、ここがかって川だった事を無言で物語る。
途中大通りの地下鉄上の大きな道路に出るが、構わず突っ切って中央の
緑地帯の街路樹脇を通る。
そこにも大きくなった樹が立っていて、この川の上に立つ樹が一番大きい。
横に立ち並ぶ他の樹と比べるとよく分かるのだ。
だからこの樹の傍を通る時は、いつも幹に触れ挨拶する。
<友よ。>
通りを横断してさらに遊歩道は続き、円山の懐に抱かれたような佐藤邸の
石山軟石倉庫を横切って、円山墓地へと通じる細い直線の墓参道に出る。
そこから墓地をぶった切る環状線を渡り、円山原始林へと歩を進めた。
空気が一瞬にして変わり、森の匂いと緑が濃く周りを覆う。
山裾の川が見えてきて、その川に沿って奥へ奥へと歩く。
森が深くなって、大きな桂の巨樹が見える。
思わず藤谷さんが声をあげる。
桂の樹はこの西南の山・森の主である。
桂の森を抜け、古くは滝の沢と呼ばれた円山西町に入り、そこからさらに
円山川沿いに源流域へ歩を進め、旧地名の所以ともなった不動の滝まで
夏草を掻き分け進む。
それから旭山公園を抜け、これも環状線で分断されている伏見稲荷の
鳥居下の古い石段を下りて、琴似街道に出た。
琴似街道をゆっくりと歩き、途中の古地図をプリントした小公園の壁を
見て、この通りがかっての幹線道路だった記述を藤谷さんに見せる。
馬車と人の通るかっての幹線道路は、車の道とは違い道幅が心地よい
のだ。
そして琴似街道を下って、旧円山村と藻岩村を繋ぐ道を終えた。
それから大通り西8丁目まで歩き、イサムノグチのブラックマントラから
緑の運河エルムゾーンへと進んだ。
この辺りはもう桂の樹はなく、ハルニレ(エルム)が代表する森のゾーン
である。
ヤマダ電機とSTVの電気・電波のセンターを抜けて、植物園から伊藤邸、
清華亭ー北大構内を通ってテンポラリースペースへ至る。

今回初めてふたつのルートを一度に歩いて感じた事は、不動の滝に代表
されるルートと北大や清華亭に代表されるルートの自然に接する人間の
回路の相違である。
近代文明の夢の形が後者には大きな比重を占めてあり、素朴な自然信仰
が前者には色濃く見られる。
共通するものは、自然への畏敬と尊敬の眼差しである。
僅か百年程前の圧倒的自然環境に対し、文明は文明なりに民は民なりに
その自然環境とのいい意味での拮抗が存在するのである。
しかしあのオリンピックを契機に展開された環状線のような物流土木工事
の道路には、もうそうした自然への畏敬の念は消えている。
その証左が、墓地を分断し神社を分断した幹線道路の存在である。
ここにはもう自然とのいい意味での拮抗はなく、自然を凌駕し傲慢な直線
の暴力だけが道路だけではなく、建物すべてにも風景の中に在る。
琴似街道、行啓通りに至る伏見稲荷参道下の神輿を奉納していたと思われ
る大きな高い入口の建物が今回忽然と消えて、更地になっているのを目にし
た。多分周囲の状況から思うに、ここもいずれマンシヨンが立つと思われた。
美しい鄙びた時を映し出す石段の下にあったこの建物が消えたのは、口惜し
い気持がした。
石段だけが残って、その上は環状線で断ち切られ、その下は高層マンシヨン
で断ち切られる。
ここから続く山裾の川の道、その下に沿う街道と有機的な自然との接点を保つ
これらの道はある時代までの人間の自然との関わり方、拮抗の在り方として
非常に大切な心の礎石とも思えるものだった。
そしてそれらの記憶にいつも添うようにあるのは、多くの一本の巨樹たちである。
友よ、あなたたちが生きてその記憶を今に伝えてくれている。

*中橋修展「内包ー呼応する場」-7月20日(金)-25日(水)am11時ー
 pm7時。
*今村しずかライブー7月29日(日)午後7時~入場料1500円

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-07-19 13:06 | Comments(0)


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