曇り日が続いている。
西側の窓口に陽光の射す機会が減って、ベンチと窓の壁に描かれた
草のような紋様と窓に透ける蔦の交響のドラマが少し寂しい。
それでも風に揺れる蔦と描かれた虚構の草が柔らかい光に浮かんで
静かだ。
次回展示予定の中橋修さんが来る。
中橋さんは2006年の最初の藤谷康晴展を見ている。
この時は一番街のビル群を細密に描いた作品だったから、その後の
藤谷さんの変化も良く知っている。
今回は1階の北壁にある「海際のコスモス」が気に入ったという。
そうだなあ、これが今の藤谷さんの掴んだ石狩の一番街。
このシンプルな白の直線と有機的な青の描画コスモス(宇宙)こそが、
今回のトニカ(基奏低音)と思われる。
都会の一番街とは違うより原初的な海際の物流基地。
都会では購買と消費の為のきらびやかな衣装がこの街を覆っているが、
この海際の物流基地にはそれがない。
あるのは、物流の骨格となる直線の道路網と倉庫群だけ。
その周囲には陸と水の境が護岸された岸壁として広がる。
都市もこの新港も同じ骨格の構造をした物流の街である。
表面を覆う衣装が違うが、消費と供給の物流の一大基地である事に変わり
はないのだ。
しかしその周りを取り囲む自然の存在の密着度が違う。
新港の傍には海と空の境が広がり、見渡す限り舗装されたアスファルトの
路面と倉庫群が広がる。
その無機質な空間だからこそ一層、一草一木の小さな自然が目に沁みる。
「海際のコスモス」とは、そうした都市構造を囲繞する自然の発見から生まれ
た藤谷さんのアリアでもあると思う。
現実の都会では構造体のみしか直視出来得なかったものが、ここにはもう
ひとつこの構造を囲繞する大きな世界がある。
都市の虚飾性に対峙して自らの情念という内なる自然を対置して表現して
きた藤谷康晴には、この外なる大きな自然という情念の発見は深い意味をも
っていたと思われる。
その体験としてあった、内なる情念をも包含する大自然の存在の発見が今回
の展示の基奏低音(トニカ)となっていると私は思う。
*藤谷康晴展「WILD BRIGHTNESS-幻視の狩人」-7月15日(日)まで。
am11時ーpm7時。最終日午後5時~ライブパフォーマンス。
*中橋修展「内包ー呼応する場」-7月20日(金)-25日(水)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503