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テンポラリー通信

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2012年 07月 10日

メタフジカル石狩ー幻月・7月(8)

2階吹き抜け廻廊部分の展示をゆっくりと見ていると、ここは
魂が飛んでいる空間のようである。
それに比して1階部分の展示は、より構成的で抑制が効いている。
北側壁4分の3を占める白の太い直線と有機的な斑のある美しい青
の画面は、藤谷康晴の石狩新港体験が都市体験と重なって投影して
あるように感じる。
物流の拠点としての人工的な護岸されたエリアは、格子状の直線で
都市を象徴するかのように海岸を引き裂いている。
そしてこの青と白だけの色彩構成には、もうひとつの人工的な構築物
北石狩衛生センターのゴミ処理場の迷彩色、その青と白の建物の色彩
をも想起させる。
さらに白い直線を包むように斑の渦巻く有機的な青の世界が囲繞して、
壁は右で突如切れて終る。
壁が4分の3で画面が切れ残りが余白としてあるのは、私の解釈では
ここからが石狩河口と思われるからだ。
札幌側に位置する石狩新港側とその対岸に在る望来・来札・知津狩等の
アイヌ語地名を多く遺す旧海岸との切れ目が、この北壁4分の1を残した
意味のように私には見える。
そしてこの壁に続く東正面壁の保つ40枚の乱舞する作品群は、彼の
石狩賛歌へと繋がるように思う。
そしてその魂の乱舞が2階吹き抜け廻廊部分に陽炎のように揺らめく。

佐佐木方斎の伝説の3部作「格子群」「余剰群」「自由群」に倣っていえば、
白の直線と青の斑面で構成された作品は、さしずめ「格子群」にあたり、
40枚の「WILD BRIGHTNESS」は「自由群」にあたり、2階吹き抜け廻
廊部分の作品群はさしずめ「余剰群」にあたるのかも知れない。
初日にその佐佐木方斎が来て、次回の新作は「自由群」から始めると
思わず口走ったのはその意味でも理由ない事ではないのかも知れない。
そんな気がしている。
世代を超えてこの近似性は何処からやってくるのだろうか。
それは多分世代ではなく、同時代としての都市体験の深みから発せられ
た眼差しの共有性と思われるのだ。

山田航さんと穂村弘さんの共著「世界中が夕焼け」の出版記念、昨日の
東京代官山蔦屋書店サイン会に出た東京の岡部くんから電話が来る。
良い会だったようだ。
札幌でも13日三省堂書店で同様のサイン会がある。


*藤谷康晴展「WILD BRIGHTNESS-幻視の狩人」-7月15日(日)まで。
 am11時ーpm7時:最終日午後5時~ドローイングパフォーマンス。
*中橋修展「内包ー呼応する場」-7月20日(金)-25日(水)
*今村しずかライブー7月29日(日)午後7時~。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-07-10 12:41 | Comments(0)


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