初日曇天そして雨。
昼から雨が上がり、薄日が射す。
空間の光が変わり、作品の呼吸が深くなる。
会場作品撮影に来たY氏の目付きが変わる。
今回の展示は、作品一点一点というよりも、会場の空気全体に
作品が息づいている。
特に2階吹き抜け廻廊部分の磨りガラス窓に映る外壁の蔦の翳と
その下の長いベンチと壁に直描きされた蔦のような描画が光の中
で一体化するからである。
描かれた虚構の蔦と外の現実の蔦が交響する。
都市の虚飾性を剥ぎ無機質な構造体としてビル群を細密に描いた初期
の藤谷康晴。
そこから呪術的とさえ見える情念の奔流を絵画化し、都市構造に対峙させ
てきた近年の表現活動。
その醒めた凝視表現と熱い情念表現の両極を経て、無機質な虚と有機的な
実を共に包含するある地平を今回獲得しつつあるように感じる。
この変化のキーワードは、多分都市の虚飾性を脱ぎ捨てた石狩新港での
労働体験、そしてその対岸の石狩河口を歩いた経験が、どこかで影響を
与えている気がするのである。
石狩河口を挟むふたつの対照的な風景の相違は、無機質な岸辺と有機的な
岸辺の対比でもあり、そのどちらもが人間の生活現実と深く関わって存在して
在ったからである。
物流の拠点として消費都市の修飾性を削いだ人工の港湾海岸倉庫街。
自然の地形を遺すアイヌ語地名の対岸の石狩河口地帯。
この対比体験は藤谷さんにとって大きな経験であった気がする。
今回の展示において、人工的なものと自然的なものが会場空間に深く関与
してあるのは、その影響、証左であるような気がする。
ナウシカにおいて<腐海>もまた人間活動の一部であったように、直線化された
人工海岸倉庫群もまた人間活動の一部である。
そして自然の地形を生かしたかっての集落の跡もまた、人間活動の痕跡である。
そのようにありのままに環境自然を見詰める事の出来た経験が、今回の展示に
も反映されて包含されているように思えるのだ。
*藤谷康晴展「WILD BRIGHTNESS-幻視の狩人」-7月5日(木)-
15日(日)am11時ーpm7時:月曜定休。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503