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テンポラリー通信

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2012年 06月 19日

潮のようにー命月・6月(12)

ポプラの綿毛が風に飛んでいる。
朝、自転車で走っていると道の両脇が白く帯になっていた。
季節はもう初夏から真夏へ移っている。
ギヤラリーに着くとすでに人が待っていた。
M君である。
先週2回ほど森本さんの制作を見に来て、今日は完成を見に来たと言う。
このところここへ来て何かが解けたのか、もうすっかり常連のような感じ、
親しく話すようになった。
昨夜は見に行くことを考えて眠れなかったという。
作品と場所の両方に磁力を感じている気がした。
一昨日までの公開制作の場は、作品の完成とともに綺麗に片付けられ
タイトル・価格も整えられていた。
M君は一点気に入って予約を入れる。
その後何人かの人が続いて訪れ、最後にO君が来る。
O君は昨日東京から札幌に帰って来たばかりで、荷物はそのままにして
ここへ来たと言う。
6月で大学を中退し、理容師の学校に入り直すという。
手を使う仕事が自分には向いていて、大学を出て就職する道を止めたと
言うのだ。
彼は現代詩手帖の投稿の常連で、詩人でもある。
この先この詩の仕事と、理容の仕事の両方を続けていかねばならない。
東京を去る時には百人近い人たちが別れを惜しんでくれたという。
同人誌の仲間が多いと思うから、それも彼の才能の一部である。
立つ別れで帰ってくる者がいれば、立つ別れで去る人もいる。
森本めぐみさんの新作は、立つ者の潮のような作品である。
作品に付けられたタイトルは「舟がくる」
この舟はどこから来て、何処へ行くのか。
それは多分本人にも解らないだろう。
分かっている事は、舟が来てそこに乗りどこかへ行く確かな予感である。
それが彼女の出立の徴(しるし)である。
その非常に身体的な濃い画面が横一杯に広がってもいる。

*森本めぐみ新作展ー6月24日(日)まで。am11時ーpm7時。
*藤谷康晴展「WILD BRIGHTNESS-幻視の狩人」-7月5日(木)-
 15日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-06-19 18:01 | Comments(0)


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