やっとここ2,3日青空が続く。
晴れようとき。
パステルナークの詩集の題名のようだ。
昨日先日フランス・リヨンから便りを頂いた故村岸宏昭さんの縁者
の方が帰国し、お土産を持って訪ねて来る。
展示してある遺作画を見て、感涙のようだった。
「5月・明暗の季節」展もあと一日。
最後に作品が人を引き寄せ、時を凝縮した。
今回の展示作品にはそれぞれ遠い記憶がある。
故菱川善夫氏の奥様菱川和子さんの作品は、1970年代の作品で
現在の抽象的な作風とは一味違う細密で濃密な花の絵である。
カスミソウのようにも見える紫の花が細密に描かれ、白い花瓶が艶かしい。
全体に暖色よりも寒色が主となっていて、八木伸子さんのポピーの花、
背景の黄色に溶け込んだようなふたつの花瓶とは対照的である。
女性の情念のふたつの様体を顕しているようで、今回の「5月・季節の明暗」
の主題ともなった。
凛とした暖かさ、凛とした寒さ。
そんな5月の寒暖を思うのである。
2階に展示した友川かずきの作品5点は、1980年代の作品で当時ライブ
と絵画の個展で来た時に描かれたものである。
会場で即興的に描いた大作は、あの当時の前のギヤラリーに集まっていた
友人たちを描いたものだ。
小さな作品には私がモデルと思われる作品も含まれている。
友川かずきは、フォークの歌手としても有名で、最近フランス人の撮った
彼の映画が上映されている。
絵描きとしても独特の絵画で、一部の人に高い評価がある。
津軽出身でその津軽訛りは、絵画にも陰影として反映しているように思える。
1階の作品群は5月の光の季節の明暗を主に選び展示し、2階の友川作品
は非常に人間臭い明暗を基調として構成した。
そこに村岸宏昭の遺作が突如として参入し、2階の友川作品と1階の自然を
主とする明暗を繋いだ感がある。
村岸作品は当初どこに設置するか迷ったが、結局彼が生前の最後の個展で
立っていた場所、その印象の一番強かった南窓の傍に置く事にした。
昨日訪れた縁者の方も、この位置に納得して喜んでくれたのが嬉しかった。
今度の収蔵品展「5月・季節の明暗」は、作品がそれぞれ波長を発して、時と
場所を超えて磁場のような空間を創った、と感じている。
八木保次・伸子の追悼に端を発した辛い鉄橋のような5月である。
*収蔵品展「5月・季節の明暗」-5月20日(日)まで。
am11時ーpm7時:月曜定休。
*大木裕之展「メイ」ー5月22日~予定。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1ー8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503