ベルリンの谷口顕一郎さんから便りある。
ケンとアヤ、ふたりとも元気、とある。
先日訪独したYくんに託して、ふたりにささやかなお土産を頼んだ。
その返礼である。
中でも花田和治さんの個展図録に感銘を受けたようだ。
そこに描かれた抽象化された山や海辺の形象に、遠く離れた谷口さんの
内なる石狩・札幌の風景が触発される。
きっと離れてこそ見えるものがある。
日常の生活の中で見失われているものが、遠く離れて見えてくる。
それは風景に似ているのかも知れない。
街の中で山や海を意識する事は少ないが、少し街を離れるとそこには
山野・海が広がり見えてくる。
日常が生活の裾野の視野であるならば、仕事の志の頂きはこの風景の
ように離れて見えてくるものかも知れない。
時に遠くから声が届く時は、多分に生活の日常に疲れた時である。
フランスのリヨン、マルセーユ、そしてベルリンから届いた声は、そんな
遠くからの声のような気がするのだ。
便りの末尾は、今ロッテルダム歴史博物館に設置の作品の事、そして今年
7月発売完成予定の今村しずかさん初CDのデザインに今集中している事
が書かれていた。
一昨年秋ここで谷口顕一郎個展の時、そのオープニングで今村さんが唄っ
た事が縁である。
あの時はムラギシの遺作「撓む指は羽根」も演奏された。
オープニングなのに何故か、今村さんの歌も含めてケンとアヤ涙、涙の夜
だった。
偶然ムラギシの最後に立ち会った沖縄の友人Sくんも来合わせていて、
不思議な夜だった。
思えばムラギシと私を引き合わせてくれたのも実は谷口さんである。
そんなムラギシの遺作が飛び入りした収蔵品展「明暗の季節」も、あと二日
で終わる。
そうした時にドイツから谷口さんの便りが届いている。
そうか。遠くからの遠くには、冥土の声も含まれる。
そういうことなのかも知れない。
*収蔵品展「明暗の季節」-5月20日(日)まで。
am11時ーpm7時:月曜定休。
*大木裕之展ー5月22日~予定。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503