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テンポラリー通信

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2012年 05月 09日

浅い夢ー玄黄・5月(5)

眠りが浅いのか、夢ばかり見ていた。
水面の向こうに生きた死者がいた。
生きた死者・・・?。
でもそういう感じで、薄い水面の向こうに生きた死者がいたのだ。
あれは境界の世界。生と死の間に浮かぶ人。
危ないなあ、気が落ちている。

今朝は快晴。陽射しが濃い。
路傍のタンポポの金色がその濃さを増してくる。
競馬場脇の柳の大木の梢が薄緑に煙っている。
その前の桜の木はもう散って、地面は一面の桜色。
乾いたアスファルトに黒い静脈のように裸枝が映っていたのは、
4月の半ばだったか・・。

風が出てきて窓ガラスが鳴り、陽が高い。

午後かりん舎のふたりが来る。
ずっと預かっていたという村岸宏昭さんの遺作画を持って来た。
友人の原隆太さん所蔵の高校時代の絵画である。
膝を抱えている両足を描いた作品である。
遺作展の折には額装もされてはいなかったが、金の額縁に入れられて届いた。
もう没後7年目を迎えて原さんとも連絡取れず、いつまでも預かり放しで気になる
のでここに持って来たという。
いつか原さんとも連絡できた時渡して下さい、と言う。
早速今展示中の「5月・明暗の季節」展の一隅に置いて見た。
主題ともぴたりと合う。
遺品の村岸ノートにある記載

 まだ寒さ残る 白い外灯と
 雨垂れの音だけに今は
 膝をかかえうずくまる
 膝を抱えうずくまる
 膝を抱えうずくまる

に符合する油絵の作品である。
この作品の膝を抱える主題は、晩年最後の個展では白樺を抱く作品へと
昇化していくことになる。
ひとりで膝を抱えるのではなく、共有する白樺の幹へとその抱く行為が転位
するのである。
何故こうした作品が今、今日ここに来たのだろうか。
どこかで私自身が<膝を抱えうずくまる>姿をしていたからだろうか。
ふっとそんな気がして、勇気づけられたのだった。
今回こうしてもうひとりの作家の作品が、「5月・明暗の季節」展に加わった。

*収蔵品展「明暗の季節」-5月8日(火)-20日(日)
 am11時ーpm6時:月曜定休。
 :八木保次・八木伸子・上野憲男・大島龍・後藤和子・鈴木誠子・堀田真作・
  菱川和子・村岸宏昭。(以上1階)
  友川かずき(2階)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-05-09 14:15 | Comments(0)


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