眠りが浅いのか、夢ばかり見ていた。
水面の向こうに生きた死者がいた。
生きた死者・・・?。
でもそういう感じで、薄い水面の向こうに生きた死者がいたのだ。
あれは境界の世界。生と死の間に浮かぶ人。
危ないなあ、気が落ちている。
今朝は快晴。陽射しが濃い。
路傍のタンポポの金色がその濃さを増してくる。
競馬場脇の柳の大木の梢が薄緑に煙っている。
その前の桜の木はもう散って、地面は一面の桜色。
乾いたアスファルトに黒い静脈のように裸枝が映っていたのは、
4月の半ばだったか・・。
風が出てきて窓ガラスが鳴り、陽が高い。
午後かりん舎のふたりが来る。
ずっと預かっていたという村岸宏昭さんの遺作画を持って来た。
友人の原隆太さん所蔵の高校時代の絵画である。
膝を抱えている両足を描いた作品である。
遺作展の折には額装もされてはいなかったが、金の額縁に入れられて届いた。
もう没後7年目を迎えて原さんとも連絡取れず、いつまでも預かり放しで気になる
のでここに持って来たという。
いつか原さんとも連絡できた時渡して下さい、と言う。
早速今展示中の「5月・明暗の季節」展の一隅に置いて見た。
主題ともぴたりと合う。
遺品の村岸ノートにある記載
まだ寒さ残る 白い外灯と
雨垂れの音だけに今は
膝をかかえうずくまる
膝を抱えうずくまる
膝を抱えうずくまる
に符合する油絵の作品である。
この作品の膝を抱える主題は、晩年最後の個展では白樺を抱く作品へと
昇化していくことになる。
ひとりで膝を抱えるのではなく、共有する白樺の幹へとその抱く行為が転位
するのである。
何故こうした作品が今、今日ここに来たのだろうか。
どこかで私自身が<膝を抱えうずくまる>姿をしていたからだろうか。
ふっとそんな気がして、勇気づけられたのだった。
今回こうしてもうひとりの作家の作品が、「5月・明暗の季節」展に加わった。
*収蔵品展「明暗の季節」-5月8日(火)-20日(日)
am11時ーpm6時:月曜定休。
:八木保次・八木伸子・上野憲男・大島龍・後藤和子・鈴木誠子・堀田真作・
菱川和子・村岸宏昭。(以上1階)
友川かずき(2階)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503