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テンポラリー通信

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2012年 05月 06日

雨のエルムゾーンー玄黄・5月(3)

雨の金曜日、尾道から帰省中の野上裕之さん、山田航さんと大通り公園
イサムノグチ・ブラックマントラ前で待ち合わせ、エルムゾーンを歩く。
待ち合わせ場所に行くとすでにふたりは先に来ていた。
歩き出してすぐ、野上さんが言う。
子供の名前決まりました。「アサトです、朝登と書きます」。
朝の一字入れて、その後は顔を見てから決めると言っていた第一子
の名前である。響きが良いね、と応えた。
奥さんの方の父親が、朝登とは相撲取りの四股名のようだと言ったそうだ。
実際にそういう名前のお相撲さんもいたそうだ。
しかし野上さんの命名は、アサノボリではなくアサトなのである。
朝にこだわった野上夫妻の親の気持が素直に伝わる。

八木保次さん、アサトだそうですよ。
僕はまた、あなたの彩(いろ)を思い出していました。

それから3人で小雨の中を傘をさして歩き出した。
ヤマダ電機前を越え植物園前に来ると、本日無料の看板が目に付く。
祭日の今日は入園無料という事のようである。
これはラッキー、と早速緑に濡れた園内に入る。
花がたくさん咲いている。
エゾエンゴサク、シラネアオイ、キバナノアマナ、ニリンソウ・・。
水芭蕉はすでに開花が終わり、大きな葉だけになっている。
雨に濡れたかっての湿地、泉の池、森が美しい。
ひとわたり園内を歩き、外に出て再びビル街を見ながら伊藤邸をぐるりと
半周し、高架線下を抜け偕楽園緑地跡に入る。井頭龍神にお参りをして
清華亭に達する。
野上さんたちは清華亭の中に入り、私は外の庭からエルムの大木傍に
行った。阿部守さんの作品が気になったからである。
作品は見当たらない。以前雪が融けて倒れていたのを、どこかに仕舞って
保管されているようである。
ゆっくりと内部を見て出て来た野上さんは、こういう所があるのを知らなかった
とため息をつきながら呟いている。
それからいつものように北大構内に入り、サクシコトニ川沿いに縄文遺跡公園
まで歩き、そこから獣医学部裏を抜け第二農場モデルバーンを散策した。
そして途中弁当屋に寄って弁当を買いテンポラリースペースに到着し少し遅い
昼食にする。
一気に歩いたので、2時間と少々で全行程を終えた。
意外と早かったなあ、と前回冬の行程と比較して振り返っていた。
雪のない所為と、途中昼食に食堂に入らなかった所為ですね、と山田さんが
言う。前回は総勢7人で雪の中を滑りながら歩いたのだ。
モノクロームな風景の中の行軍だったが、今回は新緑の雨の中である。
目に沁みる彩(いろ)が違う。
食事を終えてしばらくして野上さんがリュックから、お土産ですといって
広島県の銘酒賀茂鶴を出した。
それでは、と山田さんの台湾旅行土産のジョニーウオーカーの緑瓶を出して
先にそのウイスキーを飲んだ。
15年のピユアーモルトである。赤と黒は聴いたことがあるが、緑というのは
初めて知った。
ひと口飲んで、美味いと野上さんが言う。
それからいつのまにか賀茂鶴も開けてお酒と話が続いた。
途中郵便が届いたのだが、その内の一通はなんとフランスからの吉増剛造
さんからの手紙である。
2年前の師走、吉増さんがここを訪ねて来た時野上さんの個展「鳥」が
展示されていたのだ。
文月さん、山田さん、大塚くんも来て、吉増さんと会った時である。
野上さんの作品を吉増さんが誉めたのを思い出す。
野上さん、不思議と吉増さんと縁あるね、と話した。
手紙は、4月13日マルセーユで詩の朗読をした折りのDMに書かれている。
100人以上の盛会だったという。
そして新たな石狩主題の大作は、すでに1500行を超えて書き続けている、と
記されていた。
さらに気恥ずかしい事だが、向こうでIーpadー2を与えられて、テンポラリー
通信を毎朝読んでいると書かれていた。

 ボクのmarseille生活のもっとも清々しい恵ミの日記です。

 毎朝拝読するのが、とてもとても、心通わせる、・・・そう「心ーru」だよなあ。

いささか照れるというか、嬉しいというか、恐れ多いというか、襟を正すというか
複雑に感謝の気持です。
こんなハミガキブログの駄文の繰り返しを遠くフランスの地で読んで頂き感謝
の気持です。
ふたりにもこの手紙を見せていると、ギターを担いで酒井博史さんが来た。
これからライブ出演があるという。
野上さんの結婚披露宴以来で、酒井さんはやがて一曲唄おうといって
アサト君誕生を祝って、気合の入った声で朗々と歌を唄った。

こうしてゴールデンウイークの幸せな一日は過ぎた。
野上アサトくん誕生、植物園無料入園、吉増さんの手紙、酒井君の歌声
とラッキーな事が続いた美しい緑の雨の一日だった。

*収蔵品展「5月・明暗の季節」-5月8日(火)-20日(日)
 am11時ーpm7時。月曜定休。
 :八木保次・八木伸子・上野憲男・後藤和子・大島龍・鈴木誠子・菱川和子
  堀田真作(以上1階)友川かずき4点(以上2階)。
*大木裕之展ー5月22日~予定。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-05-06 12:49 | Comments(0)


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