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テンポラリー通信

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2012年 03月 21日

燃える8mm映像と静謐な炎ー風骨・3月(16)

初日の朝7時まで展示に集中して疲れただろう、齋藤玄輔さんは午後から
ホテルで休息し、夕方前早目に旭川へ帰って行った。
その後ベルリン在住の谷口顕一郎さんから、電話が入る。
お祝いの電話だったが、残念ながら本人はいない。
一昨年の<昆>テンポラリー展の時、谷口さんと一緒に展示した森本めぐみさん、
山田航さんがちょうど会場にいたので電話に出てもらう。
しばらく一年半ぶりの旧交を暖める3人の会話が続いた。
その後主役不在のまま個展初日の夜が過ぎる。
そこで前日訪れた鈴木余位さんの8mm映像をみんなで見る事にした。
昨年末の吉増剛造展の映像である。
8mmフイルム独特の肌を保った映像が炸裂する。
冒頭の数分間は、この建物を通りの向こうから全体を撮った映像である。
夕闇に明かりが窓から漏れて、全体が炎のように揺れている。
さらに内部にカメラが入って、光源の向こうに透けて銅板が濡れたように揺らぐ。
私がこの会期中記録したブログをプリントして吉増さんに送った時付けたタイトル
は、「燃えあがる銅板小屋」であったが、正に鈴木余位さんの映像は、<燃えあ
がる銅板小屋>そのもののようであった。
8mm映像独特の手持ちカメラの保つ激しい動き、そのタッチは荒ぶる光の
絵筆のようだ。
齋藤玄輔さんの静謐な植生の保つ有機的な形態とは、真逆の動的な
映像である。
斎藤さんは自身が生活する周辺の自生する植物を採取し押し花にしたもの
を版にして、その上にカーボン紙を載せインク面を綿などで削り落とし版画に
して、その作品に裏から光を透過させ作品を浮かび上がらせる。
すると藍を基調にした背景に白く抜かれた花々の姿が暗闇に浮き上がるの
である。
植生の光と水を求めて天地に垂直に伸びる有機的な姿が、静かな炎のように
闇に浮いている。
鈴木余位さんの激しく揺れる光の映像とは、真逆の静謐な炎なのである。
この対照的な世界を今回同じ時に見る事が出来たのは、不思議な因縁と
思える。

*齋藤玄輔展ー3月20日(火)-4月1日(日)am11時ーpm7時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-03-21 13:06 | Comments(0)


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