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テンポラリー通信

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2012年 03月 11日

光あふれるー風骨・3月(8)

日が長くなり、陽射しも強く柔らかになってきた。
壁の上下に長く伸びる縦長の大作に久野さんが描き込んでいる。
キャンバスに本人の姿が入り込んで、一体になっている。
制作している青い作品は、春の柔らかい光に映えて光と色彩と人が
溶け込んで浮き上がる。
本人は描く事に夢中で気付かないだろうが、少し離れて見ていると
作者の身体自体がもう絵筆のようになって絵の中にいる。
横を水平に過ぎる構図の作品が多かった作家だが、今回の作品は
縦に流れる線が主体である。
その分作家の位置が作品の中心に入り込んでいる。
岸辺の視座が水中の視座に、渦中の視座へと変わってきている。
これは大きな変化だ。
そしてもうひとつ小品が同時に描かれているが、それは卵形の作品で
この形も中心が真ん中に収斂される構図である。
きっと生来これまで世界に対して用心深くナイーブに見据える事の多か
った作家は、ここに来てより世界の中心線へ、久野さんの今までのモチ
ーフに即せば、水の端から水の中へとその位相が転位して来た感じが
する。肩の力が抜けて水中に見を任せ泳ぎ出したのだ。
滞在制作2日目の朝。
花田和治さんの道立美術館個展最終日。
これを見て来た久野さんが、凄く良い、と興奮気味で飛び込んでくる。
花田和治さんの対象を見据え突き抜ける抽象に、今久野さんが取り
組んでいる描き方の大きなヒントが刺激となって与えられた、と思う。
いい時期にしかも最終日に見ることが出来て本当に良かった。
この日は圧倒的に昨日から今日本を覆っている東日本大震災・フクシマ
原発事故の3・11とはまた違う、3月11日だった。
花田和治さんの個展最終日の3・11に感謝しなければならない。

*久野志乃滞在制作展ー3月10日(土)-15日(木)
*斎藤玄輔展ー3月20日(火)-4月1日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-03-11 12:50 | Comments(0)


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