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テンポラリー通信

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2012年 03月 08日

腐れ雪ー風骨・3月(5)

山スキーをしていた頃、山奥の純白の峰から雪融けの進んだ麓へ下って
来て、その汚れた雪を腐れ雪と言っていたのを思い出す。
冬山の天候の安定する3月以降が山スキーの季節だった。
真っ白い天地に真っ青な空が広がり、裸木の黒い樹林の間を滑った。
夏場には通れないような笹薮もスキーは軽々と入り込んで、未知の白い
大地が新鮮だった。
そんな別世界を下って麓に着くと、そこはいかにも下界という感じで、腐れ
雪が泥だらけで広がる。
昨日今日の雪融けの進む路面を見ていると、その事を思い出していた。
最近は山に近い家でなくなった所為もあり、休日にすぐスキーを担いで
近くの山の中を放浪する事も無くなった。
山スキーと登山靴が倉庫の奥に眠っている。
近くの山では、百松沢山の南峯が好きだった。
狭い僅かな広さの頂上だったが、景観は抜群で東西南北すべてが見渡せた。
この東下にある奥三角山も好きな山だった。
ここも頂上が狭いが見晴らしが良い。
そしてこれらの山の裾野は、豊かな自然林の清澄な空間だった。
そこで珈琲を沸かしごくりと飲むのが、至福の時だったと思う。

今冬は手首の骨折もあり、地下鉄に乗ることがほとんどの所為もあって、
人込みの中でナチスの親衛隊のように長靴に早足のカッ、カツという靴音
に追いかけられて、腹ばかり立てていた。
時にギブスの左手を省みずこちらも早足で追い越したりして、階段でコケタ
りして膝に痣をつくったりした。
この日は整形外科で検査の日で、左手はギブスで守られていたが、先生は
変な顔をしていた。
まあ大事には至らなかったが、下手をすると両手がギブスとなる。
自分自身の暴力的韋駄天歩きもこの際反省しながら、なぜにこうも
地下鉄通路、街の歩道で人は早足なのだろうか。
今は円山地区もそうした人が多い。
大きなスーパーの中でさえうっかりぼんやりと品物を見ていると、
突き飛ばされそうになり、ゆったりした買い物もできない。
円山地区も高層マンシヨン群が林立して、街のリズムの住人が増えた
せいと思える。

早く今は雪が消えて、自転車に乗りたいと思う。
そう思う自分は、いつの間にか山スキーの生活が遠くなってしまった。
かっては雪が消えない事が楽しみだったから。
山の奥に居た頃は、冬も歩行と山スキーがすべてで自転車も考えなかった。
住いと生活のリズムは深く関係するものだ。

*久野志乃滞在制作展ー3月10日(土)ー15日(木)
*斎藤玄輔展ー3月20日(火)-4月1日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-03-08 12:22 | Comments(0)


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