冬の筋肉がふっと緩んで、どこか春の気配がする。
時はいつのまにか3月・弥生。
古来弥生といえば、春の代名詞のようだ。
さくら さくら やよいの空は 見わたすかぎり
かすみか 雲か 匂いぞ出ずる
都ぞ弥生の雲紫に 花の香漂う宴遊(うたげ)の莚(むしろ)
尽きせぬ奢りに濃き紅や その春暮れては移ろう色の
ここに歌われる3月・弥生は、いずれもこの地の3月ではない。
本州の関東以西の季節感である。
「都ぞ弥生」(北大寮歌)にしても、この最初の歌詞は北を目指す移住者
の視座にある。この詩の最後は
星影冴かに光れる北を 人の世の清き国ぞとあこがれぬ
と歌われているからである。
まして「さくら さくら」に至っては、遠く京都か奈良の季節感であるだろう。
こちらはまだ<見わたす限り ゆきか つららか 冷気ぞ沁みる>
とでも言ったところか・・。
とはいえ寒気は確実に冬の関節を緩めて、3月を迎えている。
朝降っていた雪も暖かな淡雪のように、ふんわりと積り融けている。
西北の空も円山から北へ着く頃には、明るく輝いて青空が光っていた。
白い薄衣のように雪が路上を覆って、2月にはなかった光に溢れている。
昨日一日自宅から一歩も昼出なかった所為もあり、今朝は新鮮な気が
する。
エアーポケットのように、時にドボ~ンと落ち込む日もある。
風に甘さが少し漂い、風骨のように空気が透けて見える気がする。
この感じが、北の春の気配かも知れない。
甘く柔らかに透き通って、霞むような雪の白い空気感がそうだ。
次回予定の旭川・斎藤玄輔さんから、熱くひた向きな便りが来る。
4、5日滞在制作になるようだ。
*久野志乃滞在制作展ー2月中旬予定
*斎藤玄輔展ー3月20日(火)-4月1日(日)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503