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テンポラリー通信

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2012年 02月 28日

再会・歩行・石狩河口ー如月(21)

清華亭外庭展示の最終日、多くの人が清華亭を見終わってから集まる。
最初に来たのは音楽家の若林和美さんで、久し振りの訪問だった。
清華亭展示の感想やら近況を聞いた。
その後美術家の森本めぐみさんが来て、それぞれを紹介する。
ちょうどその時先日頂いた今村しずかさんの初CDの音源を流して
いたので、このオリジナル曲の切っ掛けを創った作家です、と森本
さんを若林さんに紹介した。
森本さんの個展時作品にインスパイヤーされて作曲され唄われた曲が、
ちょうどその時流れていたのだ。
そしてその後、村上仁美さんが来る。
実は村上さんと若林さんは、中学時代の吹奏楽部の先輩後輩で
この日20年ぶりの再会となる。
さらに森本さんが南区の高専時代、恵庭の家からお父さんのハーレー
のサイドカーに乗り通学していたのを、村上さんが偶然見て覚えていた事
で、一気に同じ地域の話題で盛り上がったのだった。
3人が打ち解けて同じ地域や学校の昔話をしている時、網走から清華亭
の展示を見にやって来た佐々木恒雄夫妻が来た。
今回阿部守さんが流氷を見る為佐々木さんの家に泊まった縁もあり、展示
を見に網走から来てくれたのだ。
それから最終日の搬出を終えた高臣大介さんや手伝った酒井博史さん
やら見終わった他の人たちも集まって来た。
そして最後に来たのは、この日前回の個展「覚醒庵」のカタログが完成した
ばかりの藤谷康晴さんだった。
印刷されたばかりのカタログテキストは、見事な出来映えで藤谷さんの
ひとつの貴重な節目となったと思われる。

休廊日の昨日は、網走の佐々木恒雄さんを案内してエルムゾーンを歩く。
ただ清華亭だけを見るのではなく、ゾーンとしてこの場所を見て欲しかった
からだ。
そして佐々木さんが札幌にいた時通っていた専門学校が、出発点のイサム・
ノグチのブラックマントラの在る大通り公園の傍だったという偶然もあった。
これはもう一度この学校に入学のようだね、と笑った。
校舎ではなく、校舎の在る場所への再入学である。
ここから植物園ー伊藤邸ー偕楽園跡地ー清華亭ー北大サクシコトニ川
ー縄文遺跡公園ー第二農場モデルバーンーテンポラリースペースへと
3時間程歩いた。
朝吹雪だった天候も途中から晴れて、遠くの山並みも望める気持の良い
歩行で佐々木さんの満足そうだった。
知っている札幌が全然知らない札幌として再発見されて、佐々木さんの
札幌に新たな札幌が加わったようである。
札幌を去り、オホーツクの漁師として生きて3年。
今また新たな出発が始っている。
佐々木さんが帰った後パソコンを開くと、昨年末吉増剛造さんと共に
このエルムゾーンを歩いた東京の吉原洋一さんからメールが届いていた。
一年かけた吉増剛造の記録が今月で完成したという報告だった。
先週掲載された石狩河口に座る吉増さんの朝日新聞の写真記事にも
触れられていて、その澄んだ表情の先に新たな詩作の予感が満ちている
事が告げられていた。
私もこの記事は見ていて、厳冬の石狩の浜に座り銅板を前に敷き原稿片手に
詩を朗読している写真には、少年のようなひたむきな眼を感じていたのだ。
雪に覆われた緑の運河エルムゾーンを歩いた後に、こうして今また石狩河口
の風景が、吉原さんの報告で眼前に広がる不思議を、何ともいえない気持ちで
読んでいたのだった。

野(ヌプ)傍の(サム)泉池(メム)展最終日は、こうして若林さんと村上さんの20年
ぶりの再会や、今はオホ-ツクに生きる佐々木さんの新たな札幌歩行エルムゾ
ーンの小さな旅も織り交ぜて、最後は吉増剛造さんの「石狩河口/座ル ふたた
び」の鮮やかなシーンで新たな一章の幕開けを予感させるようにして終ったのだ。

*久野志乃滞在制作展ー3月中旬~
*斎藤玄輔展ー3月20日(火)-4月1日(日)まで。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-02-28 13:19 | Comments(0)


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