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2012年 02月 25日

清華亭外庭展示明日で終了ー如月(20)

残すところあと一日。
清華亭外庭の展示。
清華亭、意外と知られていないこの歴史的建造物。
時計台や豊平館と並ぶ明治初期の洋館である。
他のふたつと違う事は、建っている場所が建築時と同じ場所に
在る事である。
時計台も豊平館も創建時と同じ場所にはない。
移動して現在の場所に在るのだ。
従って、土地と建物の本来の有機的な関係は喪われて、建物だけが
記念碑的に存在している。
清華亭はその点周囲の環境は大きく変わっているが、その環境の変化
も含めてかってあった風景を今に伝えている貴重な存在である。
建物の周囲に広がる土地の窪み、それはかってあった泉池(メム)の
痕跡の地形であり、隣接する小公園にはその泉の神様井頭龍神が祀ら
れている。
そしてその南側JRの高架線を抜けると、伊藤邸の広大な敷地の庭が続き、
その庭の中にも分祀された井頭龍神の祠がある。
この庭と道を挟んで同じ地形の広大な植物園の原生林が続き、ここにも深い
泉池(メム)の跡が残されている。
さらに清華亭の北側には、広大な北大キャンパスの構内が広がって、これら
の泉池(メム)を源泉としたサクシコトニ川が流れている。
都市に広がるこの泉と川の流域に、かってハルニレを代表とする森が
繋がっていたのだ。
ハルニレは英語でエルムと呼び、高水位の土地に多く立つ樹木という。
このハルニレの巨樹が、今も丘の上にたつ清華亭の庭に残されていて
かってのこの地の生き証人ともなっている。
さらに植物園ー伊藤邸ー北大構内にも多くのハルニレの大木を今も見る
事が出来る。
この緑の森の運河エルムゾーンを象徴するものとして清華亭の位置と建物が
在り、その事実が時計台や豊平館とは大きく違う清華亭の貴重なゾーンとして
の位相を形成しているのだ。
今回の阿部守×高臣大介展の主題は、このゾーンに棹さして見えない
泉池の流れを再生させる意図に在る。
その試みが成功したかどうかは別にしても、ひとつの歴史的建物の内側に
作品を封じ込めるのではなく、あくまでもその土地と建物の有機的関係性の
復活をトータルで意図した試みだけは、他の似たような展示とは一線を画す
ものとしてあるのだ。
従って今回の展示の主眼は、あくまでも清華亭内部に置かれる事を重要視
せず、その立地に主眼が置かれて展示されている。
外庭のハルニレの巨樹とその周りの樹木に作品が点在してあるのは、その
謂いである。
この和洋折衷の洋館と、周囲の自然環境の調和が活かされた遠い時代
の人間の精神性を甦らせる意図もある。
自然を破壊しつつ発展してきた現代文明の根底を見直す試みも、この
展示展開には潜んでいる。
新たな西洋化という近代時代環境と、この地の本来の自然環境とを対立し
分断破壊することなく、如何に有機的に関係化するか。
そんな明治近代の先人たちの果敢で新鮮な試みが、この土地と建物の
佇まいには活きている。
こうした洋館はかって数多くこの地には存在したが、その大半は消滅し
あるいは移転して、ただ建物だけがホルマリン漬けのように保存されて
いる。建物が本来在った場との有機的な関係性は喪われ、建物だけを
移転・保存してもその本当の意味は損なわれてしまうのだ。
清華亭はその意味で、その周囲の環境とともに本来の場所に今も建ち続
けている貴重な存在といえるのである。
この清華亭を中心とする緑の運河エルムゾーンは、札幌が札幌たり得る
喪ってはならぬ文化資源としての風景と思える。

*阿部守(鉄)×高臣大介(ガラス)「野傍の泉池(ヌプサムメム)」-2月26日
 まで。am9時ーpm4時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-02-25 12:36 | Comments(0)


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