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テンポラリー通信

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2012年 02月 14日

鉄とガラスー如月(11)

阿部守さんの鉄の造形に、高臣大介さんの吹きガラスが巻きつく。
洞爺のガラス工房で創られた共作である。
初めての試みだが、爽やかな出来映えとなった。
鉄の保つ硬質な曲線とガラスの保つ透明で硬質な曲線が不思議な世界
を創りあげている。外光の時間差によって、その表情が変わる。
テンポラリースペースの高臣作品は、川の波頭のように見える。
中は空洞ではなく、無垢の透明なガラスで、寄せては返す一瞬の波が
固まって重なっているかのようだ。
清華亭庭の作品は樹の枝から水滴のようにぶら下がり、こちらは中が
空洞で雪が溜まり、凍り、溶けて水になるように創られている。
阿部さんの作品は、清華亭の主ハルニレの巨樹の傍に楠の造形物に
鉄の円盤が加わった、まるでハルニレの孫のようにも見える黒い作品
である。雪の中に巨樹と並んで何の違和感もなく並んでいる。
清華亭の外庭を望む廊下越しに見る事が出来る。
テンポラリースペースでの展示は、この泉池から発した川の流れの
ように波頭となって流れているかに思える。
さらにハルニレを意味するアイヌ語(チキサニ:われら・こする木)木片
から火をこすった神話から、窯のような黒い方形の鉄の作品が会場
中央に置かれている。
この中に高臣さんのガラスのキャンドルが炎をあげて燃えているのだ。
清華亭とテンポラリースペースを繋ぐハルニレ(エルム)の、コンセプト
がここに表象されている。
そしてこの黒い鉄の窯のような阿部さんの造形作品の上には、高臣さん
の波頭のようなガラス作品が束になって上からぶら下ってもいる。
火と水の対のような決して交わる事のない、緊張感のある距離がいい。
朝昼午後には外光が微妙に光の角度を変え入射し、夕方から夜には
黒い鉄の窯から炎の光が洩れてくる。
炎によって生成される鉄とガラスの火の記憶が、夜の時間に甦る。
火を産み出すハルニレの巨樹の傍らから始る今回の展示の一連の
流れが、この場で火を連想させる夜の展示でひとつの完結を見せる
のだ。
多分今回の展示は、一日の太陽の周期の時間差とともに呼吸して
見えない泉とそこから産まれた流れを、ハルニレに木と共に物語る
ようにあると思える。

*阿部守(鉄)×高臣大介(ガラス)「野傍の泉池(ヌプサムメム)展
 2月14日(火)-19日(日)am11時ーpm7時。
*同上清華亭外庭展ー2月13日(月)-26日(日)am9時ーpm4時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-02-14 13:53 | Comments(0)


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