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テンポラリー通信

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2012年 02月 03日

ライブ録音「冬の鏡」-如月(3)

先月8日ここで行なわれた及川恒平さんのライブ「冬の鏡」。
そのライブ録音盤CDが送られて来た。
<お怪我の回復気になりますが・・。>と、お見舞いの文章が
添えられていた。
早速聞いてみる。
最初の「地下書店」そして「冬のロボット」と、哀愁を帯びた透明な
声が廊内を満たす。
一瞬あの日の寒気と夕暮れの青い空気を思い出す。
語りは少なく淡々と歌を繋いで、一気に数曲を唄い継いでいったのだ。
自らの唄う原点を確認するかのように、聴衆におもねることなく歌曲を
見詰めている、そんな姿勢が特に印象的なライブだった。
久し振りに聞きに来たMさんは、今までで一番良かったと、後で呟くよう
に語ってくれたのだ。
今までもう何十回もここで及川恒平のライブがあったが、CDに録音され
たのは最初の2005年3月と二度目の6月以来3度目である。
及川さん自身、今年初のこのライブが気に入っていたのかも知れない。
録音には歌人山田航さんの朗読も記録されている。

都心から離れたこの方形の街に珍しい斜め通りの片隅の小さなギヤラリー
に、片腕痛めた黒帽子の男がひとり居る。
その姿はまるでモグロフクゾーのようで、時々”ド~ン!”と指を振り下ろし
たりして、遊んでいる。
廊内には白い光が上からも下からも射し込んで、静謐である。
多分空間は、今この時にしかない美しさに満ちている。
寒気は鋭いが、この白い光は他の季節にはない独特の時間だ。
北の国に生きる多くの人たちが、ここ特有の美しさを見詰めず、囲い込まれ
たビル内の囲繞空間の電気照明だけの光の中に作品を置いて、満足して
いる。
同じ方向からのいつも同じ増幅した光に満足している。
光にも有機的な陰影のある事を忘れている。
冬には冬の光があり、夏には夏の光がある。
そしてそれは季節だけではなく、一日の午前午後夕暮れと同じ光は
二度とないのだ。
遠く離れてこの光を感じる人たちがいる。
それが及川さんであり、吉増さんでもあるのだろう。

来週から九州・福岡の阿部守さんが来る。
彼もまた年に一度ここを訪れる遠くの人である。
なにかに苛立つようにして、ふとまた指を振り上げ”・・にド~ン!”と
モグロフクゾーが顔を出す。
”フヤケタ光の増幅脂肪空間に、ド~ン!”

*阿部守(鉄)×高臣大介(ガラス)「野傍の泉」展ー2月14日(火)ー19日(日)
 am11時ーpm7時。
*同上清華亭外庭展ー2月13日(月)-26日(日)am9時ーpm4時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2012-02-03 13:08 | Comments(0)


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