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テンポラリー通信

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2012年 01月 22日

身体の範囲でー睦月(10)

身体に損傷があると、世界は身体の範囲に密着する。
非常に身体的な日常に世界は縛られる。
たった一本の手首にも世界は重い。
来月から始る鉄の作家阿部守×ガラス作家高臣大介展への清華亭庭
での展示、そしてここでのふたり展への深い回路が途絶えていた。

南西部の山稜地帯から伏流水となり湧き上がったメム(泉池)。
そのメムの森・植物園と伊藤邸と清華亭。
その緑の運河エルムゾーンの再生と鎮魂をテーマに雪の庭とここの
空間にふたりの造形が形象されるのだ。
清華亭の周りの喪われた泉。そしてそのメム(泉池)に添うように今も立つ
エルムの巨樹。
雪に覆われた近代の洋館と森と泉の記憶の庭に透明なガラスと土を思わせる
鉄の造形が札幌の正統な近代風土をリパブリックする。
それは自然の地形とトニカ(基奏低音)を共有していた時代への現在への奪取の
試みでもあるのだ。
喪失したものを懐古するのではない。
喪失したものを賛美するものでもない。
天に地に直線化し巨大化する都市へのアンチテーゼとして、有機的な
生命のトニカを一本の巨樹と泉の記憶に添って形象化する試みなのだ。
高層ビル群と物流の直線路の挾間に窪地のように存する清華亭と偕楽園跡地。
そこは本来豊かな泉池と森と川の地であり、同時に北東への石狩の海へと繋が
る宝石のように結晶するゾーンであった。
そこに明治の初期美しい洋館が建てられ、ある時期そこは花屋敷と呼ばれたという。
湧く水の傍には鮭が押し寄せ、鮭の孵化場ともなっていた。
その美しい窪みは今は涸れ果て、洋館と一本のエルムの巨樹のみが遺されて
いるだけだ。
周囲に立ち並ぶ高層ビル群が泉池の源を断ち、さらには高速鉄道の高架線が
風景を東西に断ち切って、さらに直線的にその窪みを狭めているのである。
自然な美しい窪みは、そこではもうただの暗い凹み、陰気な裏通りでしかない。
かってその美しい窪みに湧く湧き水を信仰して建立されたと思われる井頭龍神の祠も、
ただの小さな小汚い小屋にしか見えなく存在している。
そしてこの清華亭・偕楽園跡地に隣接する伊藤邸1万4千㎡には昨年来高層ビル化の
話が進んでいる。
さらに植物園ー北大構内と繋がる札幌緑の運河エルムゾーンは断ち切られる
危機にあるのである。
僅かふたりの鉄とガラスの作家作品が、何かをなし得るとは思えないが、
僅かでもあれその原理原則は、こうした直線化する都市の物流的暴力に
対峙し、生命の有機的な魂を表現として対置したく思うのである。
その緑の運河の流れの中にもうひとつのこの場所もまた位置して、清華亭一ヶ所に
閉じる事無く声を呼応していきたく思うのだ。

たった一本だけ残った
あの遠い森と泉の手首のような
エルムの巨樹へのエールの為にも。



*阿部守(鉄)×高臣大介(ガラス)展ー2月初旬~。
 清華亭×テンポラリースペース

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503 

by kakiten | 2012-01-22 13:02 | Comments(0)


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