柔らかくて滑りやすく、そして重い。
銅版長尺(36・5×478)。
大きな広い会場なら床に敷いて見せられるだろうが、
ここはそんな広さが無い。
唯一吹き抜けの高さはある。
そこで天井から吊って展示と思うのだが、これがなかなか滑って
留まらない。
かといって繊細な薄い銅版である。
傷付けたら大変だ。
長さが5m近いので、縦に垂らすと結構な重さになり、
挟む金具が表面を滑るのである。
河田雅文さんと四苦八苦する。
それで昨日は一日暮れた。
今朝一面の銀世界。
銅版が雪明りに鈍く赤銅色に光っている。
夜の電気の照明とはまた違う表情である。
挟んで傷付けず滑らないよう器具を探し、今日も一日展示集中。
柔らかく、重く、存在感ある色調。
銅板というものは、まるで作者の吉増剛造のようだ。
そして何故か懐かしい。
前の店舗の壁が、この銅板で覆われていたからだ。
時間とともに、鈍く渋味を出して色も深味を増す。
鉄板にはない銅板の良さである。
その銅板の長尺にびっしりと詩行が、打刻されてある。
時々の日付・場処も入って重厚である。
この文字の絵巻物が、ぐるりと壁に周り、かつ一本上からぶら下がる。
日中の光の変化と共に、文字も銅板も何事かを語り光に揺れる。
「石狩河口/座ル ふたたび」展。
銅板は時の流れに棹差して、烽火・旗竿のように時の川面を映し出すのだ。
*吉増剛造展「石狩河口/座ル ふたたび」-12月1日(木)-31日(土)
am11時ーpm7時:月曜定休。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503