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テンポラリー通信

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2011年 11月 05日

緋の衣ー秋冷秋水(18)

曇天・雨の予報の今朝。
テンポラリーへ自転車を飛ばし着くと、壁一面が緋の衣。
昨夜からの寒気が、最後の紅葉を見せてくれる。
風もなく曇り日の鉛色の空気に、緋色が映えている。
澄んで切れるような晴天よりも、深紅が滲むような空気感である。
曇天も良いな~あ、と瞬時見惚れていた。
こんな日も一瞬である。
散り去る前の紅葉の最後の輝きである。
午後から雨が降れば、またこの光景は変わってゆく。
雨の勢いで葉は最後の力を喪い、落下するだろう。
あるいはその内の何枚かは濡れて、さらに緋色の輝きを増すだろう。

昨日二度会場を訪れたK舎のTさんたちが、森本さんの緋色の作品
「くぼみ火山ーcaldela lake」を購入予約してくれる。
この赤が好きよ、森本カラーよね、と言う。
滞在制作最後に出来たこの作品は、全体を覆う鮮烈な深紅とその中央
に窪みに溜まる蒼い水が印象的な力作である。
今日の燃えるような深紅の紅葉は、まるでこの作品を祝福しているかの
ようだ。
昼、雨が降ってきた。
壁の緋の衣が濡れて一層その輝きを増してきた時、
鮮やかな赤の車が前に停まる。
そして若い夫婦が小さい男の子を連れて、入って来た。
しばらく会場全部を見た後、外へ出てまた車の中にいる。
見るともなく見ていると、釧路ナンバーである。
するとふたたび車を出て、こちらに入って来た。
夫婦で相談して2階に展示の「ふとん山とひとつ目ー白い山」を
購入したいと言う。
黒い山にするか、白い山にするかで相談していたという。
以前から森本作品を見続けている人で、かすかに見覚えがあった。
この作品は、エ・エン・イワ(恵庭)を最初の主題にした卒業制作展で、
今年初めに資料館に展示した布団に札幌軟石の立体作品に繋がる
作品である。
その意味で「ふとん」は今回の個展の母胎でもあると思う。
そのどちらかといえば地味な作品を、若い子連れの夫婦が、家に飾る
事を念頭に選んでくれた。
それもホンダの深紅の車で来た夫婦である。
私は嬉しくなり、お礼の気持で一昨年森本さんの個展で完成した深紅の
大作「なみなみとしてもつ」の写真を差し上げた。
ふたりを見送って、これは今日の日の紅葉からの贈り物ではないのか、
とその鮮やかな去り行く深紅の車を見て思っていたのだ。

*森本めぐみ展「ものもつ子のこと」-11月8日(火)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-11-05 13:08 | Comments(0)


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