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2011年 10月 18日

「裸のメモ」ー秋冷秋水(3)

吉増剛造さんの新詩集「裸のメモ」(書肆山田)が送られて来る。
東日本大震災以降に書かれた4篇が半分を占めている。
昨年出版された木浦通信に収録されたfieldnote 1939~2010・「裸
のメモ」と同名の巻頭の詩は、昨年5月「三田文學」春季号発表のもの
だが、この詩の音韻に、ふっと1994年の「石狩シーツ」と重なるものを
感じていた。
今年末予定の「石狩川に坐ル・ふたたび・・・」展の示唆は、昨年暮の事だ
ったから、この時期のトニカにどこか「石狩シーツ」が、潜んでいたに違い
ないとも思われる。
しかしながら、3.11以降の詩篇にはそのトニカは消えて、もっと辛く深い
河原の石ころのような、ゴロゴロとしたパソコンのお化け文字のような、
文字原が広がっている。
小文字の呟きのような小石原の間に、大文字の漢字の石塊がごろごろと
音韻を轟かしている。
この詩集が初出で最後に置かれた「、、、石を一つづつ、あるいは一つ
かみづつ」という表題詩篇が、その意味で象徴的であると思う。
音韻の響きと漢字の象形文字が、息せき切ってひしめき合っている。
声に出して、声を詰まらせて、たどたどしく読む。
そうして染み入るなにかを、今批評する事など私にはできない。
<耳を澄ます>、そして<目を澄ます>詩人吉増剛造渾身の一冊だ。

休日の昨日旭ケ丘のM邸画廊伽井丹弥人形展を見に行く。
豪邸のあらゆる空間をもれなく使い、等身大の今と思しき人体像も含めて
これまでの集大成とも思える渾身の個展である。
女性の肉体幻化の執念は凄ましい。
文字は声の響きを潜めて表象化し、人形(ひとがた)は肉の香りを表象化
する。
一冊の詩集、ひとつの個展。
これに勝るものはない。
群れて主題の曖昧な多人数展は、自慰にすぎない閉じた世界である。

*森本めぐみ展「ものもつ子のこと」-10月12日(水)-30日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2011-10-18 12:41 | Comments(0)


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