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テンポラリー通信

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2011年 09月 23日

秋空/蜻蛉/水庭ー点と線(6)

久し振りに青空が広がる朝。
秋の少し冷たい澄んだ空気の中を、繋がった蜻蛉が幾つも飛んでいた。
競馬場の辺り。
卸売センターから競馬場へかけて、緩やかなカーブの道が続く。
この辺りは、かっての界川ー琴似川の合流地点。
アスファルトの舗装が所々波打ち、亀裂が走っている。
地相の歪み、見えない川の痕跡。
自転車で走ると、小さな衝撃がタイヤを揺する。
その亀裂の先に、暗渠から顔を出した河岸が見える。
護岸され住宅街の中を曲がってゆく。
川は見えなくとも、風は空気中を流れる。
その流れに沿うように、蜻蛉が風に乗って、水を求めている。
二匹がひとつに繋がって、卵を産みつける水庭を探している。
競馬場や卸売りセンターは高い建物もなく広い空間だから、風は素直に
あるがまま流れているのだが、地上にはある筈の川の水はない。
汚れた雨のたまり水、排水の余り水、そんな水庭に繋がった蜻蛉が、
尾を点々と打っている。
空気中の川のように風は流れているが、土の上の川はない。
本能のまま、風に流れる放浪蜻蛉。
風の大地を漂流する難民のように、番(つがい)の雄雌が漂流している。
水から生まれ、束の間の命を二匹で結び、水庭を探す。
本当はこの辺りに、秋の陽炎のように光る命がたくさん煌(きらめ)いて、
地上を覆っていたに違いない。
石狩河口の対岸では、車のフロントガラスを撃つほど蜻蛉の群れがいた
記憶がある。

深い青空が広がれば、その分透明な蒼も増す。
晴れた秋の朝、蜻蛉とともに小さな感傷が飛ぶ。

*藤谷康晴展「覚醒庵~ドローイング伽藍~」-9月25日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
*梅田マサノリ展ー10月18日(火)-30日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-09-23 12:14 | Comments(0)


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