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テンポラリー通信

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2011年 09月 21日

晩年のジョン・ルイスー点と線(4)

藤谷康晴展も2週目。
2度じっくりと見に来る人が多い。
その内のひとり、ドラムス奏者の有山睦さんが来る。
通称アリさん、
先日初めて手紙を頂いた。
普段会っている人から、あらためて切手の貼った封書の手紙など戴くと、
ドキリとするものである。
内容は先日の竹本英樹展のお礼と、その際会った竹本さんの愛娘
結音ちゃんの印象、その時流れていたジョン・ルイスのバッハ平均律
の感想だった。
結音ちゃんは、昔見たフランス映画「ディーバ」に出て来たアルバ
という美少女に似たオーラがあるという。
そしてジョン・ルイスの演奏に関するメモは、ほとんどもう詩的とさえいえる
独白のように別紙にその思いが綴られていた。

 どれだけ練習して、出せる音なのか・・。ひとつぶ、ひとつぶが、優しく空から
 おちてくるような、情感をたたえている。・・・なんの説明も要らない心情告白が、
 今やっとできるようになった・・、ルイスのそんな感慨が伝わる。まちがいなく
 音楽の価値を決定的に支える演奏が目の前を通りすぎていく。

今回の藤谷康晴展では、ジョン・ルイス演奏のバッハを流している。
黒人でバッハに傾倒したモダーンジャズ奏者のジョン・ルイスが、クラシック
界とモダンジャズ界の音楽差別の挾間で、また白人と黒人の人種差別の挾間で、
どれ程の苦労があったかは分からない。
しかしそれらの差異を乗り越え、晩年バッハの平均律とゴールドベルク変奏曲
を演奏し今に遺している。その音はただひたすらにジョン・ルイスのバッハである。
<なんの説明も要らない心情告白が、今やっとできるようになった・・・、>
アリさんが書いているのは、そんな澄んだ音の事でもある。
これはある困難を経たひとりの音楽家が、素直に音楽と向かい合った時の独白の
ように私には見える。
友人のひとりクマさんが、アリさんの異常に痩せた風貌を昔見て、演奏中に
マッキー、と野次を飛ばしていたそうだ。
勿論悪意があってそうした訳ではない。痩せ方を見て、ただの酔っ払いのノリで
野次ったのである。しかしその10年後、本当に一時そうした病にあった事を知り
謝罪したのである。
病を克服した後のアリさんは、何かが変わったように思う。
それはジャンルを超え、作品を見る目・耳である。
優れたジャズドラム奏者でもある彼は、絵画・彫刻・クラシック・フォークソング
写真と領域を問わず、すっとそこに音を発するポイントを見出す。
その直感はドラムを叩く瞬間にも似て、確かである。

アリさん、クマさんと童話の世界の主人公のような友人たちがこの場を訪れ、
もそもそと何事かを語り、場の土壌を耕してくれる。
今日は藤谷さん在廊日。
どんな出会いが生まれるのだろうか。

*藤谷康晴展「覚醒庵~ドローイング伽藍~」-9月25日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
*梅田マサノリ展ー10月18日(火)-30日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-09-21 12:45 | Comments(2)
Commented by ありやま at 2011-09-21 19:02 x
自分でもどうしてかわからないまま、ジョンルイスのバッハを聴いた印象のメモを封書で送ってみたのですが、やっぱりドキリとされたということで、その点ご勘弁いただければと思います。
たまに手紙を出してみたい、という衝動にしたがってその日のうちに投函してしまいました。ご感想をブログに書いていただきありがとうございます。こんどは、わたしがドキリとしました!でも、こちらの気持ちが届いたことがわかって大変嬉しいです、ありがとうございました。
Commented by テンポラリー at 2011-09-22 11:17 x
ありやまさん>ドキリとは良い意味でです。
あらたまって・・という感じでしょうか。
お名前出してお手紙の一部も公開し、申し訳ないかなと
思いましたが、ジョン・ルイスのバッハをここまで書いて
くれた方はこれまでいなかったので、嬉しく公けにしたく
なりました。これは私自身が常々感じているジョン・ルイスを
そのまま伝えてくれた詩的な文章です。
あわせてコメントまで頂き、こちらこそ感謝申し上げます。
ありがとう。


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