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テンポラリー通信

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2011年 08月 13日

本州浪漫の街ー弓張月(22)

昨日の道新夕刊に小さく岩見沢の老舗割烹「酔月」の建物解体の記事があった。
11日市民有志約100人が集り、名残を惜しんだという。
木造の大きなこの建物は、往時の岩見沢の街を偲ばせるものである。
炭鉱全盛期に多くの本州人が往来し、きっと遠い故郷を想うように建てられた
本格的な和風木造建築物だ。
岩見沢の地名は、湯浴みする沢から転じたというから、元々人の往来の休憩所
のような交差する所だったと思える。
さらに汽車の交通網の集合地点として多くの鉄道路線が交差し、石炭の運搬
人の往来の集結地点でもあったのだろう。
その多くが本州から移住、出稼ぎに来た人たちなので、この街の匂いには
本州浪漫が色濃くある。
その街の匂いを代表する建物が、この割烹の存在だった。
往時の広大な敷地を彷彿とさせる寺院の存在もあり、この街のコアが本州
憧憬・浪漫として、他の都市とはまた違う独特の風情を形づくっていた。
アーケードのある駅前商店街にも、店舗の背後に立派な軟石倉庫があり、
この蔵の造りも本州の伝統的な様式を保っている。
またアーケード街には、懐かしいような街頭放送が流れて、喫茶店の造りも
昭和の匂いがした。
札幌ではもう遠く喪われた昭和・本州浪漫が、今だ色濃く残っていて、
初めて昨年訪れた私には、とても新鮮な街だったのだ。
その中でも特にこの割烹「酔月」の建物の大きさ、存在感には吃驚した。
今でもこの建物の前を大きな車輪に幌付きの人力車を牽く男が、芸者さんを
乗せて走っていても少しも違和感なく感じられるような、風格ある建物だった。
札幌にも幾く代とか東京庵とか都心近くにそうした料亭があったと思うが、
もうとっくに消えて今は何も無い。
さらに札幌は洋への志向が濃い為、時計台や豊平館のような洋館が多い。
これはこれで、札幌という都市のもつ街の匂いである。
その点岩見沢は明らかに、本州憧憬・浪漫がこの街の匂いなのだ。
その街の匂いを遺す建物が消える事は、もう岩見沢が岩見沢ではなくなる
ような気がする。
官ではなく、民の中で生まれたこうした建物文化が、経済的理由にも拠るの
だろうが、純粋なこの土地ならではの匂いが凝縮した結晶が壊されるようで
誠に残念と思わざるを得ない。
全道で唯一美術講座のある北海道教育大学岩見沢校がある岩見沢で、
何故こうした地元の文化資産を活用し、維持するような運動が起きない
のだろうか。
人口の多い札幌ばかりを、人口計測志向で見てばかりいては、真の文化の
足下は固まらないのではないのか。

*「海に沿って」展ー8月14日(日)まで。am11時ーpm7時。
*及川恒平コンサート「まだあたたかい悲しみー其の四」
 8月21日(日)午後6時~予約2500円当日3000円。
*竹本英樹展ー予定。
*藤谷康晴展「覚醒庵」-9月13日(火)-26日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-08-13 13:32 | Comments(0)


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