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テンポラリー通信

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2011年 08月 09日

帰省者・訪問者ー弓張月(18)

夏休みで、東京から文月悠光さん、大塚卓人くんたちが帰省した。
文月さんは帰省した日の夕方、すぐに詩の朗読会出演と多忙のようである.
東京生活も板に付いて、高校時代の少女の面影は無い。
先に来た大塚くんに震災時の東京の様子を聞いた。
最初は大きな揺れに驚いたが、その後は報道のTV映像をケイタイで
撮っている人が多かったという。
その話を聞いて、野次馬根性も今はケイタイ写真が代行しているのかと思った。
ケイタイという万能の小道具は、今やメモ代わりにも時計にも電話にもカメラに
もなる。その外にも多くの機能を持って、この間接的な道具が直接性の代わりを
担っている。五感という人間の身体が保つ直接性を、ケイタイが代行しつつある、
そんな気がふとした。
間接的な増幅装置というインフラは、都会という機能そのものかもしれない。
福島の原発も東京への電力供給の為である。
これも巨大な間接増幅装置なのだ。
東京自体が巨大な間接装置の固まりで覆われたゾーンである、そんな気が
しきりにした。
都会化とは五感という直接性を次第に喪失させ、間接的な増幅装置五感の
代行機能の肥大化にシンクロする。
この五感の衰退は文明の進歩と表裏一体で、大塚くんたち若い人たちが一方
で声を直接出す詩の朗読とかに熱心なのは、その反動なのかとも思えた。

定休日の昨日「織姫たちのスイーツ・アート」展搬出で、十勝の伽井丹弥さん
たちが寄る。
スイーツ・アート展には相当批判的な私だが、個々の作家の仕事を否定し
ている訳ではない。
10月札幌某画廊でのひさしぶりの個展も控えている伽井さんと、同行した
美術家梅田正則さんと夕方待ち合わせ、居酒屋ゆかりへ行く。
梅田さんとも久し振りで、10月伽井さんの個展時に、テンポラリーでは
梅田さんの個展を同時に開く事に話が弾んだ。

帰り際に壁に吊られているアイヌの古楽器トンコリに伽井さんが興味を示し、
触れて音を出していると、聞き慣れた音楽が流れた。Mの演奏だった。
いつの間にかカウンターの机の上には、Mの追悼集が置かれている。
やはりここでも、お盆に近いMの命日が生きていた。
居酒屋の千鶴さん、宇田川さんのさり気ない心配りである。

今日新たな職を決めた藤谷康晴さんが来る。
ここでの9月個展タイトルも決まる。
京都展と同じかと思っていたが、新たなタイトルは「覚醒庵」と言う。
一旦職を辞め、京都展に賭けた藤谷さんの新たな決意がこのタイトルに
顕われているような気がした。
それは同時にこの場から始まる事の証でもあると思う。
<覚醒>とはその意でもあるだろう。
6年前ムラギシ個展の前に始ったここでの最初の出発とその集大成、
そして今新たな出発の個展となる気がする。
それから最近はもう恒例ともなった「撓む指は羽根」を聞いてもらった。
聞き終わり”もう6年か”と藤谷さんが呟くように言った。
彼とムラギシのハイタッチ、バトンタッチで始り終わった6年前の夏。

こうして今また君の曲を聞きながら、新たな藤谷君の挑戦が始るのだ。
これも君と藤谷さんのバトンタッチ、ハイタッチ!
Mよ、君の熱い夏は続くよ。

*「海に沿って」展-8月14日(日)まで。am11時ーpm7時。
*及川恒平フォークライブ「まだあたたかい悲しみー其のⅣ」
 8月21日(日)午後5時半~予約2500円当日3000円。
*藤谷康晴展「覚醒庵」-9月13日(火)-25日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-08-09 13:32 | Comments(0)


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