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テンポラリー通信

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2011年 07月 30日

ふたつの果実ー弓張月(11)

午後も大分過ぎた時間、ゆうパックが届く。
沖縄のさとまんさんからだった。
チルドと印刷されたその小荷物は、触ると冷たく少し濡れていた。
午後2時から4時までの時間指定である。
中を開けると真っ赤に熟れたマンゴーだ。
思わず見惚れて手にとり、冷えた果実に包丁を入れ一片口にする。
美味い!こんなのは初めてである。
甘い南国の香りが漂い、口の中を甘味が駆ける。
午後の一番蒸し暑い時、この時間を指定して届いた冷えたマンゴー。
さとまんさんの心が篭もった贈り物に、感激する。
その後ちょうど見えた山里稔さん、有山睦さんにも食してもらう。
なんと良い時に・・と、ふたりは歓声を上げる。
程良く冷えた南の真っ赤な甘い果実を口に、声もない。
ちょうど来合わせたふたり。
これも今は亡きMの繋ぐ縁か・・と、ふと思った。

そう思いさとまんさん、有山さんたちの演奏したMの遺作「撓む指は羽根」を
マンゴーを食べた後に3人で聞きました。
そしてMにも、あなたの心の篭もったマンゴーを供えたつもりです。
マンゴーサイコー!サンキュー!

真っ赤な南国の果実が、眼も舌も鼻も心も豊かに潤してくれた午後が過ぎ、
閉廊後円山北町にある某ライブハウスへと向かう。
この日は今村しずかさん、有山睦さん、井雲真里さん、佐竹まどかさんの
sheepsの演奏会でゲストに古館賢治さんを加えたライブがある。
是非にとお誘いを受けていたので、今回は重い腰を上げ伺う事にした。
何故腰が重かったかといえば、このライブハウスのある界隈には
個人的な想い出がたくさん詰まっているからである。
「燃える街角 器の浪漫」と旗を掲げて、現在のテンポラリーの前身が
在った界隈だからである。
もうすぐ6回忌の来るMと出会ったのも、この界隈にいた時だった。
苦い記憶のあるこの地域を去って、その後特に夜訪れる事はなかった。
特に馴染んだ居酒屋やライブハウスは避けていたともいえる。
そのライブハウスも経営者が変わり店名も変わっていたが、
地下の店内は変わらずそのままであった。
懐かしさと同時にこの界隈で過ごした遠い記憶がすっと駆けめぐった。
この日のライブは井雲さんのヴォーカルが主役で、曲は今村しずかさん
のオリジナルがメインであった。
今回グスト出演の古館賢治さんとも久し振りで挨拶を交わしふと見ると、
同じテンポラリーのTシャツを着ているのに気付いた。
これでどこかそれまで引き篭もっていた気持がすっと消えて、楽になる。
演奏が始まり、初めて聞く井雲さんの声の張りに驚く。
声の中心に芯がある。
パーンと外へ向かう、直向(ひたむき)な快い強さがある。
聞いている内に熱く溶けるような、真っ赤な果実が心に転がるような気がした。
この時、来て良かった・・と思っていた。
来て良かった、の前に小さく小文字の<i>を置きたい気がした。
生きて良かった、そう唄の心が呟いていた気がする。
自分自身の辛い思い出が詰まるこの界隈。
どこか避けていた場所に来て、<来て良かった>と思わせてくれたのは
この唄の力である。
だから<来て>の前に小さく息を吐くように<i>が入ったと思える。
<ikiteyokatuta>
今村さんの曲もまた、そうした心深い曲である。
私は私の個人的な思いで閉じていたひとつの場とこうして、もう一度心開く
勇気の果実を頂いた気がする。

沖縄から届いた真っ赤なマンゴーと夜の円山北町で聞いた真っ赤な唄声。
この五感に響いたふたつの果実に深く感謝する一日だった。

*「海に沿って」-7月26日(火)-8月14日(日)am11時ーpm7時
 月曜定休。
*及川恒平フォークライブ「まだあたたかい悲しみー其のⅣ」
 8月21日(日)午後5時半~予約2500円当日3000円。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-07-30 12:04 | Comments(2)
Commented by ありやま at 2011-07-30 13:12 x
ご来場ありがとうございました。
ぜひ聴いていただきたいバンドとプログラムでした。
「ふたつの果実」を読んで、来ていただいてよかったと、
こころから思っています。
さとまんさんのマンゴーの味、みずみずしく、やさしい甘さでした。ご相伴にあずかり感謝です。ごちそうさまでした。
Commented by kakiten at 2011-07-30 13:29
ありやまさん>あなたの選曲・メンバー構成の力も大きいと
心底思います。その上で、それぞれが地力を発揮し成り立って
いました。ありやまギヤラリーだったかも知れませんね。
ちょうどマンゴーの時に合致して、なんという時の妙なる
不思議な巡りあわせでしたね。Mもきっと喜んでいたでしょう。
そしてsheepsの時間へと誘ってくれた気がします。
ありがとうございました。


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