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テンポラリー通信

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2011年 07月 19日

福島からー弓張月(1)

福島県須賀川市の川村龍俊さんから、詳細なその後のレポートが届く。
大地震の後、さらに原発放射性物質との日々の格闘が記されている。
茫然とその記述を目で追いながら、災厄と向き合う人のある種の明るさに
心を打たれていた。
しかしそんな甘い感想は、次のような記述に接して、すっと心の内部に
沈んだのだった。

 福島といえば、智惠子の台詞として(高村)光太郎が詩に書いた「本当の空」
 が観光の目玉ですが、震災以降、放射能による実害と風評被害によって
 その安達太良山には登れないままです。・・・・
 津波によって壊滅した海岸では遺体が荼毘に付され、まだ見つからない
 家族を探しあぐねて避難所へ戻る毎日を続ける人々が多勢います。
 そして津波で傷ついた遺体はまさに轢死体。
 過酷に非日常と日常が入れ替わりましたから、見る夢と言えば「元に戻り
 たい」しかないのです。でも震災以前に見ていた夢は、もう二度と見られ
 ないのです。あたらしく何かを創ることは、まだやりたくないし、泣くに泣け
 ない。・・・・・
 助けて欲しいけど、ほっといても欲しい。
 過剰な情報の中では、基準を見つけられないでいます。
 自分のそれまでの歴史以外には。

東京には空がないと智惠子が呟き、本当の空があると言った安達太良山。
そうか、あの山がある処か・・と思わず頷いていた。
きっと見た目は変わらず、今もその美しい山稜を見せているに違いない。
透明な空の下、その姿も空も非日常と化して禁断の山と空となっている。
海岸には累々と死者が横たわり、山と空は非日常の陰画紙。
信じれるものは、自分のそれまでの歴史。積み重ねた日常の記憶。
個人的な古いアルバムや写真を、大切な宝物のように除洗する人の姿と、
この<自分のそれまでの歴史>という言葉が重なって響いてきたのだ。
そしてこの<自分の歴史>が、<基準>という言葉と重ねて使われた時、
私たちは深い最もラデイカルな場所で、今日常と向かい合っている。
都市の安全神話のカプセル内で、ぬくぬくと過ごしている私たちの日常が
一瞬にして陰画の世界に転換し、あの安達太良山が札幌の藻岩山のように
見えてくる。
今囲繞する生の根源を、福島の日常が問うのである。

6月4日から発熱、強烈な頭痛、ついに震災後初めて会社を休んだ、と
川村さんはいう。

 なんでも風邪が流行っているとか?この時期になって風邪をひくとは、
 やはり私も人の子だったか(笑)。まあ、原因は疲労以外のなにものでも
 ありますまい。

こんな部分で私もほっと親近感を感じて、同様に(笑)を感じていたのだ。
状況は違いますが、私も人の子だったのでしょうね、川村さん・・・。
数日後

 どうやら風邪は通り過ぎていったらしく、気分良好であとは鼻声が徐々
 に元の美声に戻るのを待つだけでしょう (笑)。

ここでも小さく、私はあなたと(笑)を共有しました。
何もできませんが、私もまた私の日常現実の中で、<自分のそれまでの
歴史>を見詰め、<基準>を問うていきたいと思います。
力を頂きました。ありがとう。

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 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
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by kakiten | 2011-07-19 12:38 | Comments(0)


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