ベーマー会誌2号に田山修三さんという文化財保護指導員の方が、「点」と「面」
と「線」について書いておられる。
札幌の時計台を例にあげて、これが「日本三大がっかり風景」のひとつである
のは、「点」(建物)だけなので、がっかりするのだという。
この時計台の周囲は、もともとは敷地も現在の10倍以上もあり「面」として存在し
ていた。周りにはホップ園もあり、北講堂、寄宿舎、図書館、化学講堂、天文台、
潅木園等があったという。
豊平館も同じで、ベーマーの設計による前庭が広がり、建物と一体となった
美しさに満ちていたという。
それが中島公園に移築され、庭園と切り離され「点」となって今存在している。
清華亭もまた同じように創建当時の偕楽園という様々な施設の集った大きな
「面」の中に存在していた。
ここにもベーマーの和洋折衷の庭園があり、、さらには現伊藤邸からの湧き水
によってできた川、サケ・マス孵化場、博物館、農業官園等が広大に広がる場所
であったという。
これらはみな現在、「点」(建物)として存在し、「面」としてのゾーンが消えている。
さらのこの「点」と「面」を結ぶ時間軸が「線」として捉えられ、歴史上の今に
繋がる。
この山で言えば裾野・中腹のような「面」、山稜のトータルな全容のような「線」。
これらがすべて消去されて、鉄塔のように頂きの「点」だけが保存されている。
この構造は見方を変えれば、まるで現在の都市構造そのものに似ている。
頂きへの短絡した直線という「面」を喪失した構造である。
高速道路、高速昇降機によって地下も地上も到達点に直結する構造だ。
街も面としての存在から、建物という点の集合体に変わり、その回路は
直線という線である。
例えばDデパートからTデパートへ行くであって、「面」としての界隈性は
薄くなる。そしてそのふたつの建物(点)を結ぶ線は、地下通路であったりする。
本来文化とは、この失われつつある「面」を母胎とするのではないか。
山がもし裾野・中腹を含めず頂上点だけとすれば、限り無くタワーのような
味気ない鉄塔風景となる。正にがっかり風景となるのだ。
文化財だけに限らず、この風景は今の日本の現実風景そのものと思える。
辛うじて残っている緑の運河エルムゾーンを正に「面」として再生し、この
地域の歴史文化の「面」「線」として後世に伝える事は急務の責務と、
あらためて思っていたのだ。
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午後5時半~予約2500円当日3000円。
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テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503