先日聞きそびれた有山睦さんと今村しずかさんの初共演。
そのライブ演奏の録音を有山さんが持ってきて、聞かせてくれる。
新曲「私もその自然の中の一部なんだ」は、先に亡くなられた今村さんの
お姉さんの遺された遺稿集のタイトルでもある。
その曲を有山さんのドラムにあわせて、低く心に響くように今村さんが
唄っている。
この曲の製作動機には、今も進行中の今度の災害、その被災地の姿が
あったという。
場所を探して遅くなり着いた時はもうラストの曲で、この新曲は聞けなかった
から、こうして今あらためてヘッドホーンを通して聞き残念な気持ちがした。
今回の被災地への鎮魂と祈りが、この曲のどこかにあるなら、
今テンポラリーで展示している主題とクロスする。
うまく時間が取れれば、ここでふたりのライブをしないかと提案した。
先日今村さんも今の展示を見てくれているので、多分納得してくれるような
気がしたのだ。
有山さんの表情が動いて、相談してみると言った。
それから是非もう一曲聞いてくれないかと有山さんが言う。
小学校の卒業式で娘がピアノ演奏したものという。
再びヘッドホーンに耳をあて、流れてきたのはシュッベリウスの曲だった。
聞いて仰天した。
こんなにも深く、強く、澄んで小学校を卒業したばかりの子が弾くなんて・・。
聞くと卒業式は少人数で、ひとりひとりが答辞を述べたという。
その答辞がみんなしっかりしていて、思わず涙ぐんだという。
これもきっと今度の震災の影響だろうかと思ったと、有山さんが言った。
12、3歳頃は武士の時代で言えば元服の時である。
牛若丸が義経になる、当時の成人式の年代だ。
身体が変化し、心もナイーブになる転換期である。
きっとこの演奏はそうした心が敏感に感じている事を音で表現している。
キーシンだって13歳のショパン曲演奏は素晴らしい演奏である。
有山さん、この演奏は言葉に出来ない心を娘さんがピアノを弾く指先で
語っているよ、子供は凄いなあ、純粋だなあと、思わず感嘆の声を掛けた。
最初は親ばかと思われまいかと懸念もあったのだろうが、やはりひとりの
ミュージシアンとして有山さんには確信するものがあったに違いない。
これを卒業式で聞いた時俺は一体なにをやっているのか、とショックを
受けたと言葉少なく語る。
今度の被災地での多くの出来事、被災した人々の姿は、多分年齢に関係
なく深く人の心に染み入っている。
その気持が、ひとりひとりの答辞、このピアノ演奏の深い力強さにも
及んでいる。私はそう思っていた。
これは是非今村さんと有さんのライブには、娘さんもそっと呼びたいなあ
と話した。
実現するかどうか分からないが、ひとりひとりのこの場から発する心を
大事にして、何かを共有出来る事が始まればいい、と思っていたのだ。
小さな指先に神が宿るように、声の指先、ドラムのステイックの指先にも
きっと同じ心が宿るに違いない。
その心の指先を共有できれば、いい。
そう思えたのだ。
*「記憶と現在ーそのⅢ」展ー5月1日(日)まで。
am11時ーpm7時:月曜定休。
*及川恒平フォークライブ「まだあたたかい悲しみー其のⅢ」
5月8日(日)午後4時~予約3000円当日2500円。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fasx011-737-5503