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2011年 04月 21日
小雨降って地面が濡れ、タイヤが吸い付くように疾走る。 少し撥ねる水音が路面に響き、心地良い。 路面の残雪もすっかり消え、木々が淡い緑をそよがせている。 画廊に着きシャッターを開けると右奥に岡部昌生のフロッタージュ 「・・神の舌彫痕」が灰暗く浮かぶ。 そして正面、一原有徳作品がギラッと光る。 ステンレス鏡面の3点組みの大きな作品である。 その手前床に敷かれたゴム布に多色コラージュの佐々木徹作品と対になって、 都市の衣装性と廃墟の残像を浮かび出している。 そしてその前に鯉江良二「ヒロシマその後」展の一部飛礫(つぶて)がある。 これはヒロシマの被爆した土を札幌の土と混ぜ再焼成した土のおにぎり である。人間を殺す火から掌で人間の火に焼き返した行為の作品である。 左壁にはニューヨーク在住の坂口登の「精神と野草」が、都市の直線と 鮮やかな花々の対比を障壁画のように2連の画面に際立たせている。 その右に岩手出身の村上善男の「常盤村紙円の操り」が、日の丸のように 古紙をベースに紙を漉いて糸で円く縫い東北モダーンの世界を表現してある。 さらにその左手下には、西雅秋の「AIR HIROSHIMA」が鉄の箱にヒロシマ の空気を封印して、原子炉の塔屋のようにある。 正面右手窓際は、野上裕之の「BAKEDWORLD」が、鉛の造型を鈍く光らせ 外光に浮かんでいる。さらにその右上には今年1月に展示した同じ野上の作品 「鳥」が宙に浮かんでいる。大きな労働皮手袋をふたつに縫い合わせた鳥である。 その作品と呼応するように、安斎重男のモノクローム写真「掌の上のジャコメッ テイー」がある。左手から入る朝の光が柔らかく、写真の中の掌を包んでいる。 奥の入口前には、上野憲男の「水原にて」が、独特のブルーで優雅に佇んで いる。 いつものことだが、この作品たちが醸し出す風景は今回の「鎮魂と祈り」の 主題に調和し、今日も新鮮な世界を奏でている。 それぞれがかってそれぞれの個展時に展示された作品である。 しかし今は、他の作品とともにあって別の光を放っている。 同じ作品だが同じではない。 今を咲いている花のようである。 吹き抜けを見上げれば、上正面左壁に神内康年の「UNTITLED」が、壁材が 剥き出しになった原子炉建屋の壁の一部のように見えてある。 その右手壁には、甲斐扶佐義「猿・縁」が二匹の猿の寄り添う後姿を暖かい 視線で写したモノクロームの写真が並んでいる。 左手壁にはアキタヒデキの石狩湾に座礁したヴェトナム船の大きな横長の 写真が置かれ、その上に片目白眼の少女の目のアップの写真が置かれている。 吹き抜け回廊南部分には、上野憲男「海の外側に沿って」5点組み銅板画が 柔らかく囲み、東側回廊入り口の小さな開口部上にアキタヒデキ「火炎樹・ ハルニレ」を配した。 さらに西側窓には高臣大介「冬光」が、昼の月のように透明なガラスの破片を 浮かばせ、その左右の壁には大野一雄石狩河口公演のポスターと吉増剛造 「石狩シーツ」のポスターが飾られている。 北側奥の引っ込んだ空間には、個人的な漂流の記憶・界川游行の藤木正則 プレゼンの地図と旧器のギヤラリー床・漆喰の封印オブジエが置かれている。 そしてその傍に古川糸央の人形「青空」が座っている。 これらの作品たちが顕す空間は、私自身の個人的な思いと海への記憶である。 札幌という都市を暗渠の川を辿り、石狩の海まで至った有機的な札幌発見を これらの作品を通してかってあった場も含めて構成したつもりである。 それが、この場から発する鎮魂と祈りの根であると思っている。 作品はみな1990年代から今に至るまでテンポラリースペースで発表された 作品たちによって構成された。 そしてその事実を添える為に横に当時のテキストを作家名として配した。 こうして第三期に至るまで重層的に展示を増やしつつ空間を構成してきた。 その都度収納庫の奥から作品たちが、今年に咲く花のように現われてきた。 とても新鮮な光を発して。 その事に私自身が今、とても深い勇気を頂いている。 *「記憶と現在ーそのⅢ」展ー4月12日(火)-5月1日(日) am11時ーpm7時:月曜定休。 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2011-04-21 13:45
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