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テンポラリー通信

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2011年 04月 02日

故郷喪失ー風の土(2)

被災者の避難生活の映像を毎日見ていると、故郷喪失を思う。
特に原発の地域の方々には、いつ帰れるか、帰れる日があるのかと、
避難先での不安な日々がある。
そんな毎日のTV報道を見ていると、昨日のエイプリルフールの冗談は
嘘・冗談と思う心の余裕もなくて、本当と思い信じていた。
後で冗談と告げられ怒る気も笑う気も失せている自分に気づいた。
それ程今はバーチアルな事が現実で、現実の方がバーチアルに思える。
個人的な思いでいえば、かって何もかも喪って札幌漂流していた時の
自分と重なる思いが、被災後の避難者を見ていてあるのだ。
そしてその時寄せられた友人・知人の暖かな支援も思い出すのである。
現在展示中の作品たちを含めすべての資料を自宅に保管してくれたG氏、
食事や衣類等をさり気なく送ってくれたKさん、その他にも多くの人の心を
今あらためて思い出すのである。
あの時は自分ひとりの事だったが、今伝えられる被災者の内にも
同じ個々ひとりひとりの生活があり闘いがある。
今の集団状況も最終的には個々の現場でこれからの毎日の闘いが、
続いていくのである。
そしてそれぞれの生きる場所を取り戻さなければならない。
例えそれが前と同じ場所であっても、もう以前と同じものではない。
そこは新たに創り直さなければならない。
まして原発に近い地域であれば、その事情はもっと根本的に問われてくる。

昔の人は「国敗れて山河あり」と言った。
今は故郷(国)がなくなるだけではなく、自然(山河)もなくなるほど環境を
変え都市化を進めてきたのである。
山を削り川を埋め立て都市を造成してきたのだ。
その結果本来の山河が叛乱して、舗装路に液状化現象、渚現象を起す。
そうした山河破壊の上に暮らす我々も、この大自然・地球の叛乱の前では
被災地とほんの紙一重の都市カプセルの内外にいるだけである。
衛生・安全・便利のカプセルを保障する筈の巨きな力は、地球・大自然の逆襲
にあってひとかたまりもなく崩れ、さらにこの安全神話の象徴人工太陽原子力
が逆に牙を剥いて土・水・空気を汚染して襲いかかってくるのだ。
増幅する巨大な力を求め身の丈を忘れて人は、今再び身の丈のものと
向き合っている。
被災した人たちが助け合い身を寄せ合う姿には、まさにその等身大の事実
がある。
故郷(国)を喪失して、故郷(国)を今思う。
自然(山河)を喪失して、自然(山河)を思う。
人間を亡くして、人間を思う。
この事がいかに苦い逆説であれ、今とりあえず紙一重のカプセル内にいる
私たちが真摯に受け止めるべき被災地からの風とは、この逆説の真実では
ないかと思うのである。
必死に生きる被災地の困難の個々の現場の根は、我々と同じ現場の土壌の
中にある。

*「記憶と現在ーそのⅡ」展ー3月22日(火)-4月10日(日)
 am11時ーpm7時;月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-04-02 14:48 | Comments(0)


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