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テンポラリー通信

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2011年 03月 31日

卯月へーland・fall(30)

<酷い3月だった>とGさんが「弥生末日」と題するブログに記している。
3・11・大地震・大津波・原発同時多発テロのような月だった。
明日から4月・卯月。
<卯>とは門を開いた形の象形文字という。
門を開けば、中にこもっていた陰気が外に出て、陽気が進み入る。
そんな4月であって欲しい。
ここ北の地ではまだまだ冬の末、春には遠い。

「記憶と現在ーそのⅡ」展はアーカイブスの第二部で、前回展示に加えて
西雅秋「AIR HIROSHIMA」を、さらに2階には神内康年の「untitled」、
アキタヒデキ「破船」、上野憲男「海の外側に沿って」、藤木正則「行為・
記録」を展示した。
特に2階吹き抜け回廊部は海を意識し、1階部分の都市・大地との対比を
意図したものである。
久し振りに収蔵庫から持ち出した作品たちである。
これで一原有徳・村上善男・坂口登・安斎重男・佐々木徹・岡部昌生
野上裕之とあまり同時に見られない作品の競演となった。
今回の<祈り>をテーマとする展示は、作品たちの個性が主題に沿って
不思議な調和をもたらしている。
日々伝えられる心痛む報道に、作品たちも反応してメッセージを発して
いるかに思える。
普段倉庫の奥に眠っている作品たちが表に出て、内なる声を解放し
ギヤラリーという回路から溢れている。
これはこれで私の持つ小さな蓄積のこの場での発露なのだ。
支援チャリテイーを急遽開く方法も多々あるようだが、それはそれとして
この場で出来得る唯一単独の行為もまたあると思える。
大きな国際展を目指すプレビエンナーレ展、その下支えを意図した若手中心
the beginning展、大規模地下通路開設と、もし3月の大災害がなければ
札幌は街ぐるみ忙しい状態だった事だろう。
昨日の新聞によれば、このプレビエンナーレ展企画イヴェント
「芸術はビジネス」フォーラムを中止し、新たにチャリテイーイヴェントにしたと
報道されていた。
要するに早い話がどっちもマネーの話である。
マネーであれば多いほうがいい。
量数に軸心を置く本質が透けてみえる。
今回の大災害の教訓をもっと本質的に個々の軸心において、一本の樹木
のように垂心を深める事こそが今必要な時ではないのか。
安直にチャリテイー慈善事業を施す事が、文化・芸術の行為とは思わない。
まして国際芸術展を志す理念から出ているとは思えない。
チャリテイーそのものを否定する気は毛頭ないが、芸術・文化にはその立場
での痛みを伴った裏打ちが見えて然るべきである。
個々の作家の内部で闘われてあるその位相を収斂し打ち出す主題が、よく
見えない。「美術館が消える9日間」とタイトルされているが、それが主題とは
思えない。反美術館というなら、館外に出て、街や自然の中で企画すれば
良い事だ。美術館を消すという事に何か深い意味があるのだろうか。
反抗期の少年少女でもあるまいし、親を消すとでも意気がっているのか。
思えばここでいう美術館とは<近代>美術館が正式名称だから、現代美術
を標榜する為の駄々ッ子の所為とも思える。

*「記憶と現在ーそのⅡ」展ー3月22日(火)-4月10日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-03-31 14:41 | Comments(0)


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