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テンポラリー通信

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2011年 03月 30日

人間の背丈ーland・fall(29)

半分まで「スモール イズ ビューティフル」を読み込む。
今も変わらぬ大量生産・大量消費を目的とする産業経済社会の
合言葉がある。
「もっと多く、もっと遠く、もっと早く、もっと豊かに」
(ヨーロッパ経済共同体・シッコ・マンスホルト博士)
この考え方に対峙するように、工業技術を大量生産ではなく大衆生産という
人間的な中間技術を提唱し実践している例があげられている。
また現代農業でも土地に多大な化学薬品を投入せず、土壌と動植物と人間
の基本的関係を調べ成功した土壌協会の成功例をあげている。
この考え方の基本をシューマッハは次のように語っている。

 私は技術の発展に新しい方向を与え、
 技術を人間の真の必要物に立ち 返らせる事ができると信じている。
 それは人間の背丈に合わせる方向である。
 人間は小さいものである。
 だからこそ、小さいことはすばらしいのである。
 巨大を追い求めるのは、自己破壊に通じる。

                    (第二部・資源第五章「人間の顔をもった技術」)

この<巨大さ>を追い求める状況を我々は今も日々経験している。
<もっと多く、もっと遠く、もっと速く、もっと豊かに>とは、現代社会のすべての
状況に見られる状況である。
例えば大規模地下通路、新幹線、タワービルの林立、大規模ショッピングビル
等巨大な施設が発展と進歩の象徴のようにメガロポリス(超大型都市)化の
志向が今も進行中である。
札幌・緑の運河エルムゾーンにおいても、その有機的な森と川近代建築物
の景観が、一企業の高層ビル化さらには新幹線誘致用地として破壊されよう
としている。
さらにかって村と村を結んだ産地街道・琴似街道を形成した市場群。
その市場、通称なんまる(南円山公設市場)と円山市場が昨年・今年と
消えたのだ。
生産も消費も中間はなく、巨大の波に沈んでいく。
円山市場は小洒落た巨きなショッピングビルに変わり、なんまるは
大手スーパーの陰に消える。
どちらも地域に根ざした生鮮食材が豊富でシューマッハーのいう中間が
生きていた市場である。
遠いヨーロッパの話ではない。
我々の住む札幌の話である。
<もっと多く、もっと豊かに>の志向は、人間的背丈にあった市場(いちば)
を消す。
<もっと遠く、もっと速く>の志向は、新幹線の誘致を懇望し緑の運河を
分断する。
この志向のどれもがさらなる巨大な市場(マーケット)と、さらなる巨大な
道都圏(メガロポリスエリア)を望んでいる。
その結果メガロポリス(超大型都市)という札幌都市肥満体(メタボ)は
北海道島の一部分の特殊な巨大化症状として、自己破壊していく。
これがE・F・シューマッハ「スモール イズ ビューティフル」が、
札幌の私に伝える警告である。
翻って巨大事業に嬉々として従う芸術・文化とはなんなのか。
そこには<スモール>ならぬ「ビッグ」礼賛の<もっと、もっと>アート亡者
の姿しか見えてこないと思うのは、言い過ぎだろうか。

*「記憶と現在ーそのⅡ」展ー3月29日(火)-4月10日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-03-30 13:50 | Comments(0)


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