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テンポラリー通信

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2011年 03月 29日

小さなものが美しいーland・fall(28)

春の陽射しが降りそそぎ、小雪が光って舞っていた。
日曜日の午後及川恒平ライブがひっそりと開かれる。
震災の影響か、横浜から送ったというメール便が不着で、
フライヤーは届いていなかった。
2日前及川さんは急遽震災救援コンサートを札幌で開き、
沢山の人が来たという。
そんな事もあって聴衆はいつもの半分以下の人だったが、
ここを定点コンサートと位置付ける及川さんの歌う姿勢はゆるぎなく、
淡々と深く沁み入るように始った。
昨年発売のCDに収録された「水のカノン」と初期の傑作「雨」を続けた
歌唱は、この日のハイライトだっただろうか。
おりしも、光が射しこみ外には小雪が舞っていた。
澄んだ声がその中を流れ清冽な北の時間が満ちる。
聞き手の為というよりも、自分の声の在り処を確かめ声を紡ぎだす
唄人(うたびと)の真摯な自己確認の行(ぎょう)のようにライブがあった。
円山北町時代の7年前から続いている北の拠点。
その志の持続。
それは場所と仕事こそ違え、同じ方向を見詰めている友情と思える。
ここはまた及川恒平の声の展示、そのギヤラリーでもあるのだ。

翌定休日の午後市役所1階ロビーで開かれている琴似屯田兵村
「屯田兵屋改修工事記念」展を見に行く。
今週末長歌朗読ライブをする山田航さんがちょうど居て、
ロビー内のカフエで昼を一緒する。
展示は唐牛幸史さんの彫刻大作・資料群と多彩で多くの人が
初日から集まっていた。
山田さんと別れ久し振りに書店に寄る。
前日新聞コラムで引用されていたE・F・シューマッハの「スモール
イズ ビューティフル」を探す為だ。
福島原子力発電所が建設された年に出たこの本はすでに原発の危険を
鋭く説いているという。
また現代文明の巨大信仰を痛撃し、経済学の立場からこの物質至上主義
を産業社会の病根として抉っている。
ただ私が何よりもこの本に惹かれたのは、その題名にも拠る。
「スモール イズ ビューテイフル」。
経済学者が、小さなものに美を見る。
そこにこの本のすべてが凝縮していると感じていたのだ。
ただの経済学ではなく、そこに哲学があると感じたのだ。
本を求め読み進むと、これは誠に熱い本である。

 いかに経済がそれで繁栄するからといって、「安全性」を確保する方法も
 わからず、何千年、何万年の間、ありとあらゆる生物に測り知れぬ危険
 をもたらすような、毒性の強い物質を大量にためこんでよいというもので
 はない。そんなことをするのは、生命そのものに対する冒涜であり、その
 罪は、かって人間がおかしたどんな罪よりも数段重い。

                (第二部<資源>第四章「原子力ー救いか呪いか」)

 現代人は、自然との戦いなどというばかげたことを口にするが、その戦い
 に勝てば、自然の一部である人間がじつは敗れることを忘れている。
 ・・・・
 われわれを取り巻く生きた自然という資本を無駄遣いすると、危険に
 瀕するのは生命そのものである。

                (第一部<現代世界>第一章「生産の問題」)

今ランダムに気づいた文章を引用しても、この本は警告と示唆に満ちた
優れた啓発の書である。
40年近く前この本が啓示した現実が今日々目の前にある。

*「記憶と現在その2」展ー3月29日(火)ー4月10日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2011-03-29 13:56 | Comments(0)


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