2011年 03月 26日
量数の多寡を主とする物質主義の価値規準から、今問われているのは 真の公共という事である。 福島県原子力発電所が人口の多い首都圏の為に在った事は、もう周知の事 なのだ。 さらに同じ東太平洋側のもうひとつの女川原子力発電所は同じように 地震・津波の人的被害を受けながらも発電所破壊を免れているという。 こちらは福島に比べ首都圏から遠く、規模も福島より小規模であるが、 耐震設備を改善し最大想定災害に備えていたという。 電力とは社会生活のライフラインであり、公共料金のひとつである。 支払いを遅らせれば、容赦なく電源を切る公的力も持っている。 その公共的なるものが、資本の論理で災害を低く見て耐震強化の設備投資を 怠っていた疑問が指摘されている。 人災だという批判も出ている。 人が多いところには経済も集中する。 他方過疎の人口密度の低い所は、経済活動も停滞する。 資本の論理からいって当然と言えるのだが、そこを個々の人間の論理から みるとズレが生まれる。 このズレを埋めるものが<公共>概念ではなく、資本の論理である事が 悲劇なのだ。 今このライフラインを断たれた被災地の救援活動を支えていものは、 個々への視線を保つ<公共>の精神と行為である。 ひとりひとりのライフライン、生命を守らねばならぬという精神の行為である。 ひとりひとりの人間価値が、人口数量を規準とする量的価値観に<公共>概念 がズレ込んだ時、東京首都の為の地方福島県というズレが生じる。 そのズレを補っていたのは、多分莫大な資金・場所代の投入である。 この資本の論理が優位性をもてば、その帰結は当然資本の経済管理効率が 優先していく。 一ヶ所に6基もの原子力発電を集中させ、その防災管理を女川原子力発電所 級に設備投資すれば莫大な資金がいる。 その投資を遅らせるものは、個々の人間の価値観に立つ<公共>概念では なく資本の多寡の公共価値観であるだろう。 この傾向はなにも東京電力に限った事ではない。 すべての分野の基底に根付いている。 例えば文化芸術といったこの価値観の対極に位置するはずの分野でも 同じ傾向が見られる。 平気で芸術はビジネスと標榜し、アート運動を行なっている。 ビジネスとは資本の論理である。 個々の価値観にその基礎を置くものではない。 物質的量数の多寡が生命線である。 表現者自らが個々の価値を基底にラデイカルに類としての<公共>を 志す視座を放棄して、なにが芸術文化なのだ。 極めて限られた空間の放射能汚染が次第に風に乗って広がる様相を 呈している。 これは皮肉な陰画である。 本来一本の樹木のようにその地に深く根を張り、思想の種子を、美の綿毛を 風に飛ばし、人類としての森を有機的な宇宙のようにを創る精神文化の世界 こそが本来の風なのだ。 風もまた風土を創る。 そのようにして表現者は個として、一本の樹木のように生きるのが王道である。 表現の綿毛は内から溢れて類として真の公共を同時代の森として創る。 一本の樹木が大地に根を張らず、量的多寡を求めてパブリックなどと戯言吐き アートが資本を追いかけている根本には、量数の多寡を基本とする物質主義 社会の価値観が根を張っている。 ここにも類としての同時代を志す個の価値観、真の公共への視座は 欠落しているのだ。 *及川恒平フォークライブ「まだあたたかい悲しみそのⅡ」ー3月27日(日) 午後4時~予約2500円・当日3000円。 *「記憶と現在そのⅡ」展ー3月29日(火)-4月10日(日) テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2011-03-26 13:30
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