2011年 03月 07日
オホーツクの青を星のように内臓する作品が仕上がり、展示構成を変える。 1階正面中央にそれを据え、左右に出航の朝の碧の海とライブハウスの 室内の絵を配した。 ふたつのほぼ同じ時刻の都会の室内とオホーツクの海に挟まれて、 上半身縁取りの胸に咲く青いオホーツクの絵がある。 その人体の縁取られた肩外側横一文字左右に、茶の直線が地平線のように 横切っている。 左手に置かれた海の奥に見える地平線とその線が続くように、 繋がって見えた。 このふたつの線のタッチするものが、今回佐々木恒雄の獲得した landfall(陸地の発見)の地平線である。 折から午後の陽射しが射し込み、3点の作品が美しい光となって 彩りを放つ。 故郷網走へ帰りオホーツクに再上陸し、再び札幌にも再上陸した作家の 2年間が凝縮した2週間の最終日であった。 最後の作品を描き終え展示構成を決め、放心したような時間が来た。 そして人が絶え間なく訪れ、閉廊時間後会場撮影を頼んだ久住さんが 来る。 その時ちょうど沖縄から来札中の具志堅さんが来た。 マイミクではあったが、初対面の具志堅さんは以前来た同じ沖縄の さとまんさんとは対照的な派手なオーラ漂う偉丈夫である。 本人は私の所とは知らず、佐々木恒雄展を見に来たらしく、それと分かって から声を上げる。 オー!マイミクのkakitenさん!学者だねえ~と言う。(なんのこっちゃ?) 大声で賑やかな沖縄人の明るく強い面丸出しだ。 佐々木さんの朝の海を見て、これは沖縄の海だという。 さらに2週間前の流氷の海の写真を見せると、目を丸くして同じ海か と驚いていた。 佐々木さんの出航の朝の海は、南の沖縄の海のように暖かく青い。 これは彼の再上陸した故郷の新鮮なオホーツクなのだ。 この色彩の海が生まれて、彼の個展の2週間は始まったのである。 沖縄から来た濃い南の人が、その佐々木恒雄の再発見したオホーツク をまるで南の海の輝きのようだと驚きの声を発したのである。 この絵を非買品にした佐々木さんは、きっと網走へ帰ってからも家の 一角に飾り今後の心の糧にする事だろう。 掛け替えのない再発見した彼のオホ-ツクである。 不意に訪れた具志堅さんの明るく強いオーラが、佐々木さんの内なる オホーツクに強い光を与えて、最終日の最後の時間が輝く。 みんな帰って撮影も終えた久住さんと作品を片付ける佐々木さんの為に、 私はMの名曲「撓む指は羽根」を流した。 有山睦さんたちの演奏するジャズ演奏バージヨンである。 久住さんもまたMと親しかったひとりであり、具志堅さんとの縁も Mが介在している。 Mの遺稿集の装画は佐々木さんであり、最終日にその原画を出版社の かりん舎のふたりが持参してくれたのだった。 そして朝の船上に立つ「ハヤスケ」という漁具を持った男を描いた作品を 購入してくれたのだ。 最後の夜の最後の音楽は・・、もうMよ。 君の「撓む指は羽根」、これしかない。 横で聞く久住さんの指先が震えて泳ぐ様子が、眼の端に映る。 夜拙宅の一室に泊まった佐々木さんが、ポツリと言った。 あの時あの曲を作品を片付けながら聞いて、胸がいっぱいだったな・・。 それぞれのそれぞれの生きる現場で、それぞれの胸の中に、 <撓む指は羽根>がある。 オホーツクで撓(たわ)む指、札幌で撓(たわ)む指、沖縄で撓(たわ)む指。 そしてその心の指は、間違いなくいつか羽根となってはばたきlandfallするのだ。 その純粋結晶を作品という。 見えない時代の夢の陸地、その再上陸の可能性にタッチして 佐々木恒雄展は見事に終ったのだ。 *テンポラリースペース・アーカイブス展ー3月11日(金)-25日(金) am11時ーpm7時:月曜定休。 *及川恒平ライブ「まだあたたかい悲しみⅡ」-3月27日(日)午後4時~ 予約2500円・当日3000円 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2011-03-07 13:03
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