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テンポラリー通信

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2011年 02月 22日

海上の色ーland・fall(2)

月曜日昼佐々木恒雄さん夫妻が来廊。
早速展示が始る。
まず最初に北の壁面に3点設置する。
中央に横30cm縦50cmほどの船上に立つ男の絵。
波濤が立ち上がり、長い漁の道具を手に持っている。
背後の空気は輝き、散光している。
朝漁に出た時暁光が射した瞬間の同僚の顔という。
左右に置かれた横33cm縦80cm程の大きさの2点は、
オホーツクの海と空気の色のようだ。
白と青だけの澄んで凍った色彩。
総数50点ほどの展示で、この3点の設置が中心となる。
さらに右に暁の射す海上から見た知床連山が広がり、
左奥に漁に出る前の番屋で打ち合わせる同僚の姿が置かれた。
この展示を見た時、今回個展をしてもらって良かったと正直思う。
海の上で生きる人間しか感じとれない、かつ漁に出て2年の今でしか
感じとれない、新鮮な風・空気・海の色だと思った。

概ね展示が終る頃、釧路のFさんが来た。
Fさんは2年前佐々木さん札幌最後の個展の時、
赤色の抽象作品「朱雀」を購入してくれた人である。
DMに使われたこの作品を見て、ここに初めて訪ねて来てくれた。
この時じっと作品に魅入っていた時の後姿が印象的であった。
今回もじっくり会場を見回った後、同じ後姿で北側にある3点をじっと見ていた。
この3点は一体ですね、と呟くように言う。
夜明け前の暗闇からやがて暁光を浴びて浮かんだ同僚の姿。
光る空気。
砕け飛ぶ波頭。
青と白の光が混合する海波、空気。
そこに立つ漁具「ハヤスケ」を持つ人。
左右に置かれた海と風の色がこの人を囲む空間を示唆する。
私は昨年陸から見たオホーツクの海を思い出していた。
しかしそれは、陸から見たオホーツク海である。
この波濤と空気感は海上でなければ見る事が出来得ないものだ。
Fさんはまだじっと見ている。
この後姿だ。2年前に見たものと同じだ。
Fさんが帰った後、その話を佐々木さんにした。
展示の日。
最初の人が前回札幌最後の個展に赤の作品を購入してくれたFさんだった。
その事に佐々木さんも感動している。
そしてあの時と同じ後姿で、今回の作品を見入ってくれた事を知り喜ぶ。

明けて今日が初日。
晴天の朝。
光が美しい。
爽やかな顔をして佐々木さん、愛美さんが来る。
昨夜は思いの外疲れて、ぐっすりと眠ったという。
今日からまた新作を描く2週間が始る。
この2年間の凝縮した、今にしか描けない色彩が顕われる事だろう。
一度離れて見えてくる故郷オホーツク、そしてサッポロ。
新鮮な再上陸である。

*佐々木恒雄展ー2月22日(火)-3月6日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax-11-737-5503

by kakiten | 2011-02-22 12:29 | Comments(0)


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