宇田川洋さんが、黒曜石の原石を持って来た。
赤っぽいものと灰色のものと黒く尖ったもの。
前の日見た加工されたものとはまた違う黒曜石の塊である。
紋別の白滝ジオパーク会長の木村さんのご好意でプレゼントという。
その塊を手に取る高臣さんの目が輝く。
産地の場所を尋ねて、いずれ行きたいと漏らす。
私もまだ紋別・白滝には行った事がない。
北海道も広い。知らない所がたくさんある。
札幌より洞爺の方近いんじやない?と言って笑われる。
白滝黒曜石遺跡群は、世界的規模の黒曜石鉱体とその黒曜石を加工し
石器製作を行なった旧石器遺跡群があるという。
ここはジオパークとして最近認定された所なのだ。
この黒曜石の加工には鹿の角が使われたという。
この話を宇田川さんから聞いて古代の浪漫が一気に広がった。
鹿の角をなぜか十本ほど持っているという高臣さんの眼がさらに光る。
傍で聞いていたコトリさんが、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に黒曜石の
地図の話があると言った。
私もうろ覚えで思い出したが、その言葉のリアリテイーが黒曜石の現物
を目の前にしていると増した気がしてくるのであつた。
単なるレトリックではない、不思議なリアリテイーである。
黒く透明な鉱石の石板に彫られた地図。
その宇宙的な星座のような輝きがふと甦るのを感じていた。
透明という観念が新たな輝きを保って黒曜石の周りに光っている。
鉱物という結晶体は、我々の持つ既成概念を覆す不思議な力を保っている。
遠い時代人は、この鉱石を貴石として敬い道具として大切に利用したのだろう。
後世貨幣価値に変化する以前の素朴な自然への敬意が、黒曜石の輝きには
潜んでいる。
高臣大介ガラス展、今回の大きな収獲はこの黒曜石との出会いでもあった
のではないだろうか。
*高臣大介ガラス展「雪調(ゆきしらべ)」-2月6日(日)まで。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503