2011年 01月 27日
朝札幌市資料館へ向かう。 大通りは雪祭りの準備で、中は通れない。 方形の公園、方形の街角。 直線で折れてつまらない道。 東正面に向いて大通り公園を遮るように、札幌軟石の堅固な洋館が見える。 旧高等裁判所の札幌市資料館である。 正面玄関を入り螺旋階段を2階に上る。 AからDまでの4室それぞれが、展示会場である。 正面右に先に入ると、そこは森本めぐみさんの展示で「くぼみ火山」。 恵庭で生れた自分の土地の記憶を、支笏火山の凝結溶岩札幌軟石 を使って造型している。 土と火の記憶から故郷を再構成しようとする力業である。 遠い昔大きな山が爆発しその窪みが支笏湖になり、飛び散った溶岩は 凝固して軟石となったという。 この壮大な大地のドラマに比し、作品は今いちぼんやりしたぬるい 感じである。 寝起きの森本さん、といったら失礼だろうか。 彼女の絵画の特色である強烈な赤と線が、今回の立体展示にはない。 秋元さなえさんは「芝生の川にいる魚」。 散漫な感じがして印象が薄い。 しかし廊下に資料として置かれていた江別・早苗別川のデッサン・写真 文章の冊子が面白かった。 太田理美さんは、古い記念写真にある自分の輪郭部分だけを チョコレートで塗り込め展示している。 タイトルは「”られる”のチカラで造られる」。 他者との関係性の中で造られる可塑性の自分というコンセプトだろうか。 もうひとり中村絵美さんは、鹿皮や鯨の骨を使って開拓時の自然との 物語をイメージしているようだ。 彼女は長万部出身という。 4人が4様に生まれた場所を意識した作品で、その視線の先にどう 今が構成されているかはまだ不分明である。 札幌出身の太田さんは、人間関係という社会性から今を見詰め、 他の3人はそれぞれの出身風土から、今の自分を見詰めようとしている。 作品としてのまとまりからいえば、太田さんが一番見やすい。 しかしそこにある環境は、家族や級友といった人間関係の中の自分 である。 それは正にチョコレートのように、外界の温度によって左右され得る 受動的な<私>社会構造である。 他の3人は自然風土との関りから今の自分を再構成しようとする 環境への構造的な契機を持っている。 未消化なあいまいな部分が多々あるとはいえ、後者の視座にある可能性 を期待するものがある。 昨年の3人展以来で期待していた展示だったが、 そう簡単に作品は結晶しない。 それぞれの主題が深まるように今後も見守っていくしかない。 そしてやはりこの後は個展として見たいと思う。 展示者の来ていない会場を出て再び大通り公園に出る。 雪に埋まった公園脇を抜け、車に気をつけながら歩く。 運び込まれた雪で見通しがなく、道もない。 左右に並ぶ方形の建物に圧迫感がある。 明白だけど遮断するような立方体だ。 デジタルTVの大きな画面が林立しているような。 地下鉄に乗ると人もまたデジタル画面のように、林立して並ぶ。 明白だけど、匂いも奥行きも消えている。 大通り公園の積まれた雪も同じ顔をしていた。 ふと作品と空間の関係性を考えていた。 旧高等裁判所のあの会場で、作品たちは原告?被告? どちらに立つか戸惑いながら林立していただけじゃないのか・・と思える。 もっと濃く、強く、衝撃を放て! *川俣正アーカイブス「テトラハウス326」展ー1月30日(日)まで。 am11時ーpm7時。 *高臣大介ガラス展「雪調(ゆきしらべ)」-2月1日(火)-6日(日) テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2011-01-27 12:19
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