夕方2本の電話が入る。
ひとつは川俣正さんからで、予定が込んで今日は伺えないという
電話だった。
この日は午後から道立近代美術館でレクチャー、シンポジュム
懇親会と立て続けのスケジュールである。
懇親会の前に寄ろうとしたのだろうが、人が多く無理のようだった。
出席したOとKから当日の模様が伝えられる。
川俣さんの話はテトラ、テトラとテトラハウスの話が多かったという。
そして掌から煙が出ている出席者が多かったよ、Kが皮肉な口調でいう。
今や世界的な現代アーテイストとして高名な人である。
北海道出身という事もあり、地元意識で詣でる人も多いのだろう。
もうひとつの電話は尾道の野上裕之さんからで、
作品が無事着いたというものだった。
やれやれ、良かったと電話口でお互いに肩を叩くようにして喜んだ。
ちょうど来ていた山田航さん、瀬戸くんとも替わって話してもらう。
現代短歌の山田さんは、野上さんの作品に触発されて短歌を創っている。
その歌を贈られた野上さんは自身のブログの表紙に掲載している。
今回の個展で出会ったふたりは、もう作品を通した心友である。
川俣さんはあらためて今日伺うという事だったが、今日も朝から
夕方までワークショップである。
時間が取れるのだろうか。
今回の川俣正「北海道インプログレス」は、北海道で現代アートの
プロジェクトを考えると題されある意味で川俣自身の満を持しての
里帰りプロジェクトの模索である。
その原点が1983年のテトラハウス326プロジェクトにある事は
間違いない。
しかしそれは、そこへ懐古し戻る事ではない。
北海道の幾つかの地域で同時に立ち上げる広域の構想を今は
持って望んでいると思う。
ひとつひとつの地域を凝縮しつつ、俯瞰する視座が感じられるのだ。
その視点が彼の満を持した北への里帰りである。
それは多分生まれ育った大地への再上陸であり、ランドの再生ともいえる
構想であるはずだ。
かって住宅街の一角が彼のプロジェクトによって発熱し、日常が非日常へ
と転位したように、その規模をもっと広範囲な北海道<ランド>として
仕掛ける大志を保って、川俣は今回里帰りを果さんとしている。
その視座の端緒を私は一昨年暮れの目黒美術館「”文化”資源としての
<炭鉱>展」での彼の展示に感じていたのだ。
それは従来の濃い密度の横軸の視座から、より俯瞰する視座の転位と
してあったからである。
北海道島を俯瞰するランドの再生とでもいえる今回の北への里帰りである。
昨年暮の吉増剛造さんの’90年代の銅葉<里帰り>展発言に引き続き、
’80年代川俣正さんのテトラハウス里帰り、野上裕之さんの2000年代の
里帰りと今年は、私たち自らの現在・<里>をスパイラルに問われる年である。
心して向き合わなければならぬ。
そんな気がしている。
*川俣正アーカイブス「テトラハウス326」展ー1月21日(金)-30日(日)
am11時ーpm7時:月曜定休。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503