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テンポラリー通信

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2006年 03月 31日

若い古本屋さんの夢ー岸辺の表情(18)

夕刻吉成秀夫さんが訪ねてくる。ビールとサッポロポテトを持って来た。彼は札幌
大学OBで今福龍太さんの教え子、ブラジルへ旅立った對馬さんや山口昌男文庫
の小山さん達と同じ仲間だ。今は古書店伊藤書房に勤めて将来自分の古本屋を
開きたいという希望をもっている青年である。退去した後の店を覗き、白樺の木を
見上げたとブログにコメントをくれた人だ。久し振りで逢い熊谷さん留守中の下の茶
の間でビールを飲みながら話が弾んだ。彼の為にある人から本が何十箱も送られ
てきたという話は凄いなあと思った。その人の気持ちの濃さに応える為どう本屋を
創っていくか、彼はどこかで悩んでいた。私は古本という言葉が良くないと思って
いたのだ。newとoldという対立概念は捨てた方がいい。いい本というのは装丁も
大きさも中身も含めて貴重な存在で、時代のオブジエでもありそれを絵に置き換
ればそれを古絵とは言わないのだ。印刷物で複製ではあってもそういう物がもう出
来ない時代になりつつある訳でこれからの古書店は<古>という概念を変えてもっ
と別の観点から店作りを考えたらいいと話した。それがどういう物かを分かっている
訳では無論ない。ただ本それ自体がもっている厚み手触りデザイン等は文庫本や
パソコンのフラットさとは決定的に異質なものだからその貴重性はこれから重要に
なっていくと思われるのだ。開かれた明るい光のなかで美しい古書店は在り得ない
だろうか。古い本もまたレトロではあるが過激なキラキラした本の為の本屋があっ
もいいと思う。いつか一緒にゾーンを創りたいねと話した。そういえばあのレトロス
ペースにあった古い手押しの印刷機械を若いハンコ屋の酒井博史さんがとうとう
館長の坂さんの許可を受け名刺を刷るようになるかも知れない。印字とか印刷と
いう<印>のプレスもまた現在消えつつある技術である。それが甦る時なにかキ
ラキラした新鮮さを感じる、それが本にもあっていいと思う。そんなハンコ屋さんや
本屋さんが並んだらいい街角ができるなあ、とひとり密かに思っている。

by kakiten | 2006-03-31 16:48 | Comments(0)


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