オーノな日から一夜明けて、まだその余韻が残っている。
前日資料庫の奥から出てきた古いヴィデオテープ。
その鮮やかな再生画面を、映像の中の一方の当事者である
吉増剛造さん本人と見たこと。
そしてこの映像の年に産まれた文月悠光さんの不意の帰郷訪問。
さらにこの甦った前夜祭映像の翌日の石狩河口大野一雄公演の映像が、
このふたりを今に繋いでいたこと。
私は、吉増さんが「裸のメモ」と題した詳細な大部の年譜を読み、そのあまりに
精緻な記録にもう自らの経帷子を編み込んだのかと感じ、伝えた直後の訪問
だった事から、そう発した自分の言葉の重さに迎える側として、物凄く緊張して
いた自分がいたのだった。
しかしこの幻の映像出現と文月さんたちのお陰で、その緊張は杞憂に終わり
素晴らしい時間を共有することが出来たのである。
この前夜祭映像記録はあらためて吉増さんの手で、将来大野一雄の歴史として
後世に遺されることになるだろう。
今回「裸のメモ」のさらなる重層が予定されていると聞いた。
これはもうメモなんていうものではない。
さらに2・5倍の千頁を超える年譜となる予定という。
森だなあと思う。
吉増剛造という一本の大樹は、さらなる人との関わりを意識的に深める事で、
今有機的な森となる。
生涯を賭けた最終・究極の大作である。
そう思う。
帰省したばかりの文月さんと別れ、その後我々は山田航さんも含め3人は
宇田川洋さんの居酒屋へ向かった。
店に置いてある砂澤ビッキの木彫の作品を見て、吉増さんが懐かしそうに
声を上げた。
それからそれを席の傍に置き、何度も撫でながらお酒が進む。
それは、今は遠い親友との再会を楽しんでいるかのように思えた。
大野一雄、砂澤ビッキ、そして吉増剛造の魂の交流が垣間見えた
貴重な一夜であったのだ。
*野上裕之展「鳥を放つ」-12月21日(火)-1月16日(日)
月曜・元旦休廊。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
tel/fax011-737-5503